インタビュー ウィズ リリー-2
「今は?」
「母は一昨年亡くなったわ、風邪をこじらせてね、もう体力があんまりなかったから肺炎になっちゃって、それでも肝臓に負担のかかる強い薬は使えなくて・・・あたしの仕事のことはあんまり良くは思ってなかったみたいだけど、あたし、結構楽しくやってたからさ、最後は仕方がないかって思ってくれたみたい」
「そうだったんだ・・・・仕事、楽しい?」
「うん、楽しいよ、踊り上手くなったでしょ?」
「ああ、見違える様にね」
「あの頃はまだ一週間目だったもんね」
「オープンも泣きそうな顔してやってた」
「だって本当に恥ずかしくてね、それでも覚悟して開こうとすると母の泣いた顔が浮かんでくるの、だからホントに涙流してオープンしてた」
「今でも恥ずかしい?」
「恥ずかしいよ、オープンの寸前はドキドキするし、エイって気合かけないと開けないもん、だけど、それすら恥ずかしくなくなったら女として終ってない?」
「そう思う、羞恥心に耐えて開いてくれるからありがたいんだ」
「わかってるね、にっこり笑って開く人もいるけどさ、恥ずかしくない人なんかいないと思うよ」
「今でも白黒やまな板はやってないんだね」
「やってない、母との約束なのよ、それだけはやらないって」
「お母さんもやらなかったのかな」
「やってた、だってそれであたしが出来ちゃったんだもん」
「ゴムは使ってなかったの?」
「使ってたよ、でも当時のは粗悪品も混ざってたみたい、だからあたしの父親は誰なのか見当もつかないらしいよ、いつ妊娠したかは一週間くらいに特定できるらしいけどその間毎日四人を相手にしてたんだから候補は20人位いるし、責任取ってなんて言えっこないしね、今なら品質は信用できるけどそのかわりエイズとかの心配もあるしさ、あたしもあんまりやりたくない、それより踊りや見せ方を磨こうと思ってる」
「それが正解だろうな、新風営法にも対応できるかも」
「だといいけど」
「対応できればずっと続ける?」
「うん、続けるつもり、好きだもん、この仕事」
「恥ずかしいのに?」
「それがいいんじゃない、刺激があって、舞台は面白いよ、やり直しが利かないけどその分お客さんの反応をじかに感じられるしさ、喜んでもらえればあたしも嬉しくなるもん、でもさ、好きな人がいた時期があってね、その時は辛かったな、脱ぐの」
「その彼とは?」
「あんまり長くは続かなかったな、で、彼と別れた次の日に暗い気持ちで舞台に上がったんだけど、お客さんの声援に励まされてね、思わず泣いちゃった、そしたらもっと声援が飛んできて、わんわん泣きながら踊ってた」
「良い話だね」
「うん、あの時一皮剥けた気がする」
「この世界に入った時は仕方なしだったけど、今はやりがいを感じて仕事している・・・」
「そうだね」
「風営法を審議した議員に聞かせたいな」
「ホントホント、法律ってそういうものかもしれないけど、個々の事情とかやってる者の気持ちとか関係なしだもんね・・・私、七年前にストリップがなければソープ嬢かホステスになるしかなかったし、今禁止されたら失業だもんね」
「なんか狙い撃ちって感じだよな、法を厳密に適用するならソープなんか真っ先にアウトなんだけどな」
「そうよねぇ、個室でこそこそするより開けっぴろげなストリップの方がよっぽどカラッとしてるのにね」
「まったくだよ」