植物園にて-6
(あぁ……そうか、誰かに聞いて欲しかったんだ……)
リョウツゥは軽くなった胸辺りを撫でて息を吸った。
逆にジルの方は重い気持ちになっていた。
(どこの里も……しょうもねぇ)
ジルの育った銀の地域にも陰送りと似た場所がある。
どこにも光が当たる場所と影の部分があるのだ。
(ホント、しょうもねぇ)
ジルは溜め息混じりに息を吐き、手の中の指輪を摘まんでリョウツゥに見せる。
「ほれ。出来た」
「わぁ♪」
ジルが作った指輪は彫金とは違い、どちらかと言うとワイヤーアートだった。
太めのワイヤーと細いワイヤーが繊細に編まれ、割れた3つの石がバランス良く配置されている。
どうやって石を固定しているのか不思議だ。
「はめてみ?」
ジルの促す言葉にリョウツゥはコクリと頷いて、指輪を左手の薬指にはめる。
「ぴったり」
ふふふ、と笑ったリョウツゥは手をヒラヒラさせてジルに見せた。
「おう。ぴったりだな」
キラキラと顔を輝かせて指輪を見つめるリョウツゥが眩しくて、ジルは視線を外して工具を片付けた。
「あの、ありがとうございます」
「詫びだから、礼はいらねぇよ?」
「ぅん。でも、ありがとう」
リョウツゥが本当に嬉しそうに言うので、ジルは若干苛つく。
(枷みたいなもんじゃねぇか)
しかも、相手は死んでいるのに……。
口に出しては言わなかったが、軽く舌打ちしてしまう。
「じゃな」
「あ、はい。またどこかで会えると良いですね」
この言葉に不機嫌だったジルはぶはっと吹き出してしまった。
「ははっ大事なもんはしまっとけよ?」
会う度に色んなものを壊されてはたまらないだろ?と言うジルにリョウツゥは儚く笑う。
「大丈夫です。もう、大切なものはありませんから」
その笑顔は本当に儚く、風が吹いたら霞になって消えてしまいそうで……ジルは思わずリョウツゥの手首を掴んだ。
「?」
「あ……」
(何やってんだ?)
ただ、急に不安になっただけ。
「あ〜…っと……」
自分の行動に戸惑って視線をさ迷わせていると、リョウツゥがついっと身を乗りだしてきた。