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飛べない鳥の飛ばし方
【ファンタジー 官能小説】

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植物園にて-5


 暫くオタオタしていたジルだったが、こうしていても割れてしまった物は仕方ない、と開き直ってリョウツゥの横にどっかりと座った。

「よし。分かった。泣く程、大事なもんなんだな?任せろ」

 大きな荷物をあさったジルは中から様々な工具を引っ張り出す。

「?」

 リョウツゥは少し涙を引っ込めてジルを見た。

「また落ちても割れないように加工してやる。何が良い?」

「え?」

 加工とは何だろう?とリョウツゥは首を傾げる。

「例えばネックレスとかピアスとか……それならずっと身につけてられっだろ?」

 どうやらアクセサリーにしてくれるらしい。

「ほ、本当?!あ、でも……お金……」

 そういう加工は専門知識がいるのでお金がかかる。

「専門じゃないからいらねぇ。特別サービスだ。で、何が良い?」

 もう1度聞かれたリョウツゥはパアッと顔を輝かせた。
 『今ないたカラスがもう笑う』という諺がどこかにあったなあ、とジルは思う。
 出会った時も今も、リョウツゥの表情はコロコロ変わる。
 特に喜んでいる時の表情はこっちまで嬉しくなってしまう程だ。
 何となく笑って返すと、リョウツゥは両手を握って希望を伝える。

「あ、あの、指輪。指輪が良いです」

「指輪ぁ?」

「はい!」

 指輪は男性が女性に愛をこめて贈るものだ。
 女性が自分で買うものではないのが常識。
 買うとしたら相当な見栄っ張りで寂しい女だけだ。

「その石、婚約者がくれたんです」

 ああ成る程ね、と納得したジルだったが……。

「もう、死んじゃいましたけど」

 さすがにこの言葉には動きが止まった。

「あ〜っと……ホント、悪かった」

 そりゃ泣く程大事なもんだよなぁ、とジルは自分のしでかした事にげんなりする。

「指輪にしてくれるなら許します」

 割れてしまったけど無くなったワケではないし、指輪にしてくれるなら問題無しだ。

「おう。任せろ」

 ジルは懐からゴーグルを出して装着。
 色々操作しながら荷物の中から工具や材料になるものを出して加工を始めた。

 指輪に加工している間、ジルが婚約者の事を聞いてきたので手持ちぶさたなリョウツゥはポツポツと話す。
 バインとの思い出や約束した事を話すうちに、必然的に自分が飛べない事や陰送りになった事なども話さなければならなかったが、話すにつれて気分が軽くなっていくのに気付いた。



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