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美菜と繋がったままキスを繰り返し、互いに手の届く体をまさぐりながら話をするのが好きだった。昂奮に充血している性器が徐々に潤いと硬度を増し、充溢感を味わいつつ限界を確認し合って一本道を疾走するのがいつからか二人の昇り方になっていた。
今夜は美菜が上になって波に揺られるように前後に腰を揺すっている。粘膜に包まれて心地がいい。
体の関係を持つようになって二年になる。瀬野隆司25歳、美菜も同い年、部課は違うが同じ会社の同期である。入社後、一年ほど経った慰安旅行で知り合って引き合うようになった。
初めのうちは若い体をぶつけ合い、貪り合ったものだが、半同棲の生活を始めるようになって、いわば腰を据えたセックスを楽しむようになった。
半同棲ーー
お互いのそれぞれの住まいはそのままに、往き来して、気の向くまま瀬野のマンションに美菜が行き、また気分転換とばかりに美菜の所で瀬野が寝起きする。別に取り決めをしたわけではなく、食事の帰りなど何となくどちらかに足を向けているうちにそうなったのである。だから滞在の日数はまちまちだった。一泊で帰ることもあれば一ヶ月以上どちらかで過ごすこともあったし、友達が来る時などはお互い干渉しないようにしていた。
同棲すれば家賃も半分で済む。
「そうしない?」
「そうだな」
瀬野は美菜を愛していた。いずれ結婚という話もしていたくらいだから美菜も同じ想いだったと思う。気持ちの流れの中で無理なく口をついた言葉であった。だが、
「もう少し、このままでいよう」
まだ結婚計画が具体化していなかったということになろうか。
年に1、2回、親が上京してくることもある。
「いきなりじゃ、驚くかもね」
双方の親に紹介してからにした方がいい。それに、もう少し、自由を楽しみたい思いもあった。
「来週、友達が来るのよ」
「友達」
2歳下で、真奈美といい、故郷金沢の高校時代の後輩だという。
「東京は初めて?」
「ううん。去年1回来たの」
「へえ、知らなかったな」
「あなたに言ってなかったから。ちょうどお盆休みの時。あなたが帰省したあと」
「ふーん。来週って、いつから?」
「月曜日の夜来るの」
「ふーん。泊っていくんだろう?」
「うん。2、3日、泊めてって言ってきた」
「そうか。じゃあ、俺明日帰るよ」
この日は土曜、美菜の部屋である。
「じゃなくて、いて欲しいの」
1DKのマンションである。布団も2組しかない。
「だってーー」
「いてくれないと困るのよ」
訳を聞いて瀬野は思わず笑ってしまったが、美菜は真剣だった。
一昨年の夏以来美菜は故郷に帰っていない。年末年始は瀬野と甘い旅行を楽しんだ。
だから昨年真奈美と会ったのは1年ぶりだった。
ところが再会して、あまりの変わりように唖然とした。
「男になってたのよ」
「男?」
髪はショートカットで言葉遣いも変わっていた。
「たぶん親の前ではそれまで通りにしてたんでしょうけど」
それで、どうしたのか訊いてみると、
「ぼくは男だったんだと思うようになったっていうの」
「性同一性障害とかいうやつか?」
「ちがうわよ。だいたい毎年会ってたんだからわかるわよ。2年前まで女の子だったんだから。彼氏もいたみたいだし」
「それで、俺にいて欲しいってどういうこと?」
「うん……」
美菜は瀬野の目を見つめ、
「抱きつかれたの。夜、寝てたら」
不意に起き上がったと思ったら被さってきて、キスされたという。
瀬野は美菜の腰に手を当てて微妙な動きを止めた。
「ちょっと、まって」
「出そうになった?」
「うん」
「ぴくぴくしてきたからそうだと思った」
「いったん休憩しよう」
「うん。ゆっくりしよう」
シャワーをすませてビールで喉を潤して一息つくと話の続きが始まった。
「ひさしぶりだったんで先輩に甘えたんじゃないのか?」
「だって、キスっていっても舌入れてきたのよ」
「へえ、レズなの?」
「そんなの全然ない子だったのよ」
「そういうの、急になることもあるのかな……」
気付かずに潜在的に在ったものが何かの切っ掛けで顕在化することはあるのかもしれない。
「キスだけじゃないのよ。オッパイ揉んでくるし、ここにも手を入れてきて」
美菜は自分の秘部に手を当てた。
初めは冗談だと思ってされるまま笑っていたが、亀裂に指を差し入れられて抵抗した。
「真奈ちゃん、ちょっと」
「濡れてるね」
それは自分でもわかっていた。胸を揉まれているうちに妙な気持になって疼いていた。
「どうしたの?」
「だって俺、男だから美菜ちゃんに欲情したんだ」
「男って、何で急にそう思うようになったの?」
「目覚めたのかな……」
真奈美はそれ以上語らず、
「やさしくするから、好きにさせて……」
じっと見つめる目が訴えるように潤んで見えた。
「それで、好きにさせたの?」
「……うん……真奈は女だしね……別に危険じゃないと思って」
美菜の乳房を口に含みながら真奈美の表情は陶酔しているようだった。さらに舌は体を舐め回し、その手はパジャマを下げていった。
「あ……」
下半身があらわになり、心持ち脚をよじったものの、そのまま任せた。
身構える間もなく秘部に真奈美の舌が這入ってきた。
「そこまでしたの?」
「そう。……何となく、雰囲気で予感はあったけど、びっくりした……」
「それは、本格的だな」
「本格的って……」
「それから?」
最後は脚を開かされて、正常位の格好で重なってきた。そして股間を擦りつけ真奈美は嗚咽のような声を洩らして、痙攣したという。