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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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G.-4

「おー!瀬戸じゃん。どーした……」
「2日前から39℃台の熱発と喘息の発作。発作はさっき起こった。今日も勤務中に倒れてんだけど、採血と尿は異常無し。とりあえず検査頼む」
「はいよ。お前付き添い?」
「そーゆーことにしといて」
「関係は?」
「同じ病棟のスタッフ」
「そ。待ってて。初期対応はしとくから。後で先生から説明あると思う」
陽向は近くにあったベッドに寝かされ、採血やら吸入やらをされて次第に眠りに落ちていった。

「風間…」
呼ばれて、薄っすらと目を開ける。
ぼやけていて誰だか分からない。
「んー…」
声も上手く出ない。
頭がガンガンする。
「風間?大丈夫?」
これは紛れもない瀬戸の声だ。
「はい…」と掠れた声で呟く。
眠くて頭が痛くて吐きそうで仕方ない。
口に手を当てて俯くと、すかさず誰かが入れ物を口元に持って来てくれた。
そこに遠慮なく吐く。
「どーしたもんかな…」
「今朝もこんな感じでした。頭痛と吐き気が強いみたいで。昼過ぎまで制吐剤いってて、そこからは落ち着いてたんすけどね」
「なるほどね。既往は喘息だけかな?」
「いや、俺も喘息はさっき知ったんで…他は分かんないっす」
「あーそう…」
しかめっ面をしながらやって来たチャラい男。
たまに東病棟にも来る神経内科の加納先生だ。
「おう、久しぶり」
陽向は虚ろな目を加納に向けた。
知っている人にこんな顔を見せるのは嫌だ。
でも、こればっかりは仕方ない。
「風間、喘息以外に病気したことある?」
コクンと頷く。
「教えて」
「…髄膜炎」
「なるほど……。いつ?」
「去年…です…」
陽向が答えると、加納は「一応ルンバールしとくか」と言い、救急のスタッフに声を掛けた。
また、あれをやるのか…。
去年の思い出がフラッシュバックする。
救急の対応は早いもので、ものの5分もしないうちに海老の様な格好をさせられた。
ガッチリ手と足を掴まれる。
「麻酔かけるよー…少しチクっとするね」
チクっとどころではない…陽向はそれを知っていた。
思い切り太い針を腰に刺され、「うっ…」と声が漏れる。
「頑張ったね。あともういっちょ。もうそんなに痛くないからね。少し気持ち悪いかもしれないけど…。痺れる感じしたら教えてね」
そう言われた後、重苦しい何かが脳天まで駆け巡る。
陽向は名前も知らない救急スタッフの手を握った。
優しく握り返し「もうちょっとだよ」と声を掛けてくれる。
気持ちの悪い感覚はしばらく続いた。
「はい、終わり。これ出るの時間かかるからゆっくりしてて」
「はい…」
仰向けになり、ため息をつく。
「お疲れ様。てゆーか風間ってさ」
「……」
「やっぱ可愛いのな。いつもマスクしてるから分かんなかったけどー!」
加納がケラケラ笑う。
「病人からかうのやめろよ先生」
「瀬戸さんご立腹?そこの関係も知りたーい!」
「はぁ?言うほどのもんじゃねーっすよ」
「おっ、付き合ってるとかー?」
「バカバカ。ふつーに同じ病棟のスタッフだから」
「からの?」
「からのもクソもないっすよ」
「この話の続きは来週の飲み会で!」
「ハハハ!」
そんなやりとりを鼓膜のはるか彼方で聞く。
仰向けでウトウトしていると、瀬戸がやって来た。
「大丈夫?」
「ハイ…」
「俺、ルンバールなんかされたことねーからさ…。たまにうちの病棟にも来るじゃん?髄膜炎の患者。風間が一番理解出来る看護師かもな」
「あはは…」
「痛かったろ?」
「痛かった」
「頑張ったな。なんでもないといーな」
瀬戸は優しく笑う他に、何もしなかった。
触れたり、嫌味を言ったりすることもなかった。
本当は優しくて人思いの温かい人なんだ。
患者さんにも、こうやって優しい人なんだろうな。
今まで、誤解してたかな…。
「瀬戸さん…」
「なに?」
「あの…さっき…バカにすることしかできないの?とか言って、すみませんでした…」
「いーよ別に。つーかさ…」
「はい?」
「やっとまともに喋れるよーになった?」
「だいぶ…」
「まだ頭痛い?」
「痛いです」
陽向が言うと、瀬戸は笑った。


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