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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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G.-10

「なんでしょー?」
陽向はケタケタ笑って両手で湊の耳をつまんだ。
ふにゃっと笑った顔はやっぱり具合が悪そうだけど、そんな顔でもいい。
俺はそれだけで、元気になれるから。

陽向の日常は、考えてみたらそれほど知らない。
朝起きて何をしているのか、何時に起きているのかすら分からない。
きっと仕事してからは、不規則な生活で、きっと泣き虫だしアホだから毎日怒られて泣いて、でも、負けず嫌いだから次の日には、なにこのクソ!って思って、陽向なりに頑張ってたんだろうな。
ただの想像でしかない。
自分は陽向のことを、それほど知らないのかもしれない。
だけど、それほど知らない人のことをこんなにも愛している自分は、きっと、惹かれる何かがあって今を生きているのだろう。
もしかしたらこの先、そんな人のことを嫌いになってしまうことがあるかもしれない。
でも、それは可能性でしかない。
まだ、上辺だけしか知らないかもしれない。
でも、いないと寂しくてどうしようもなくなる。
とてつもなく。
心に穴が空いたような冷たい空間があって……。
それを埋めてくれるのは、たった一人。
お前しかいないんだよ…。

ノートに視線を戻して何かを書く陽向に呟く。
「陽向」
「んー?」
「ひな坊」
「なぁにー?」
「こっち向いて」
ノートに絵ではなく文字を綴る陽向が、すっぴんでもクリクリした目を湊に向ける。
後頭部に手を添え、そのままキスをする。
カラン、と床にペンが落ちる音がする。
そのまま抱き締めて、湊は陽向の匂いを忘れまいと深呼吸した。
「…さみしい」
「え…」
ついに、心の声が口を出て音となった。
「毎日家に帰って来て、お前がいないと寂しいの」
陽向はヒヒッと笑って「なにそれっ」と言った。
「わかんねー。…俺やっぱ、お前がいねーとダメみたい」
その言葉に「らしくないなぁ」と笑う陽向の顔はずいぶん大人だった。
「そんな甘えただっけ?五十嵐湊」
「甘えたじゃねーよ」
湊は陽向をきつく抱き締めた。
「陽向…愛してる……」
言わずにはいられなかった。
思いが溢れ出して止まらない。
こんな時でさえ。
早く元気になって。
俺の力になって。
俺はもう、陽向の笑顔でしか元気をもらえないんだ。
バカでもアホでもいい。
お前さえいてくれれば、他に何もいらない。
陽向は湊を優しく抱き締めて「あたしも」と微笑んだ。
「そろそろ仕事?」
「ん。また明日来るから」
「無理しなくていーよ」
「してねーよ。どっちかっつーと、このサイクルのが案外落ち着く」
「無理だったら無理って連絡してね」
「しつけーな。黙れちびっ子」
「ちびっ子じゃないし!心配してんのに!」
「ばーか。こっちのが心配だっつの」
陽向のほっぺたを指でいじりながら湊は口をへの字に曲げて笑った。
「おチビは寝てなさい」
おでこにキスを落とし、ベッドに寝かせる。
「ちゃんとメシ食えよ」
「食べてるよ」
「柳井さんから半分しか食わねーって聞いたぞ」
「え…柳井さんおしゃべり!…だって食べる気起きないんだもん」
「薬だと思って食えよ。免疫落ちんのが一番身体に悪いっつーの。一番分かってんのお前だろーが」
「……はい」
ごもっともです、と思い陽向はコクンと頷いた。
「喘息良くなってきてるんだって?」
「うん。熱出なくなってから吸入1日1回になった」
「良かったな」
湊は陽向にもう一度キスをして微笑んだ。
「したがりだね」
「悪い?」
「悪くない」
「また明日な」
笑顔で見送る陽向に手を振り、病室を出る。
次に会う時は、もっと元気だといいな…。


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