病名-4
「ヤッバイ…超楽しい!」
「うん!」
楽しい事は楽しいが瀬奈は少し控え目だ。
「あと一つ!」
意気込む幸代。そんな幸代に瀬奈が言った。
「またお金たくさん使っちゃうから…。」
金は幸代が出していた。買えば1000円もしないであろうぬいぐるみに一つだけで3000円も使っている。瀬奈はさすがに遠慮する。
「な〜に言ってるのよぅ!楽しむ時は楽しむの!私、彼氏もいないし趣味もないから、こういう時に使わないと使い道ないの。だから安心して楽しもうよ!ほら、瀬奈ちゃん、あのシラックマ狙って!」
「い、いいんですか?」
「当たり前じゃん!イケイケ!」
「は、はい!」
申し訳なさげにレバーを操作する。すると何と一発でゲットした。
「瀬奈ちゃん凄い!!」
「きゃー!きゃー!」
ゲットしたシラックマを取り出し興奮する瀬奈。
「ヤダ、超嬉しい!」
幸代と抱きあって思い切り喜んだ。2人仲良くゲットしたところで初めてのキャッチャーを終えた。2人とも大事そうにぬいぐるみを抱えてショッピングや食事を楽しんだ。
気付けばもう夕方だ。帰宅するのに車に乗る。後部座席には幸代に買って貰った服などの荷物でいっぱいだった。
「こんなに買って貰っちゃってごめんなさい…。」
「何言ってるのよ。私は元々そのつもりだったんだから気にしないで?てかまだ買い足りないかな…。」
「いえ…!十分です…」
焦る瀬奈。と同時に幸代に大きな感謝を感じている。
「私、もちろん色々と買って貰って物凄く感謝しているんですけど、でも今日、こんなに楽しい一日にしてくれた事に一番感謝してます。幸代さん、ありがとうございました!」
頭を下げる瀬奈。
「こっちこそ!私、こんなに楽しんだの久しぶりだったわ?」
「私もです。もう楽しくて楽しくて…。」
そう言いながら自分でも理解できないが涙が溢れて来た。
「あれ?どうして涙が出てくるの…?」
拭いても拭いても止まらない。
「きっと色々と悩む事が多かっただろうから、それが涙になって出て来たんだよ。これからは1人で悩む事ないからね?一緒に悩んで、一緒に楽しもうよ。」
幸代の温かさに瀬奈の涙はますます止まらなくなった。そんな瀬奈をそっとしたまま前を向き運転する幸代だった。
海斗の家に着く寸前、落ち着いてきた瀬奈に幸代は言った。
「今度は遊園地行こうね!」
「はい!」
泣きっ面の笑顔がとても可愛らしかった。また遊ぶ約束をして海斗には会わずに幸代は帰って行った。
運転する幸代は何故が胸が締め付けられた。車を泊めハンドルを握りながら下を向く幸代。
「複雑…。」
そう零した。瀬奈を救いたいし仲良くなりたいのは事実だ。しかしこの楽しかった一日が海斗とのものだったらと考えると、その言葉が思わず口から出てしまったのである。瀬奈との友情と海斗への愛の狭間で幸代は苦しみを覚えているのであった。