病名-2
しかし困った事はここからであった。聡美も知香もまさか幸代がそんな会話を始めるとは思っていなかった。幸代は何の恥じらいもなく自然にとんでもない事を口走る。
「ねぇ、聡美ちゃんも知香ちゃんもオナニーってする??」
「えっ…!?」
耳を疑った。幸代はそういう話題を持ち上げない女だと思っていたし、知香はさておき聡美はあまり猥談が得意ではない。一瞬にして顔が赤くなる。
「ど、どうしたのいきなり…」
幸代は驚く程平然としていた。
「私、今までオナニーなんてしなかったのね?でも海斗さんを好きだと自覚してからね、オナニーが止まらなくなっちゃったの。いい歳しておかしいって自分でも分かってるんだけど、みんなはどうなのかなって…。ねぇ、聡美ちゃんは今でもするの…?」
あからさまに動揺する聡美。
「わ、私!?わ、私は…し、しないよ…。」
聡美は溜息をついてガッカリした。
「だよね…。」
肩を落とし俯いた幸代はいきなり頭を上げ知香を見て言った。
「知香ちゃんは!?」
「えっ!?」
不意を突かれた知香はビクッとした。
「知香ちゃんはしてそうだよね!?してるよね!?」
物凄い勢いで聞かれた知香は思わず頭を縦に振った。
「だよねー!知香ちゃんちょっとエロいもんねー!絶対してると思ったぁ!」
知香の手を握り目をウルウルさせている幸代が物凄く嫌だった。確かにたまにしている。しかしそれを人に知られるのは物凄く恥ずかしかった。やはりたまにしている聡美だが、とても正直に言う気分にはなれなかった。
「良かったぁ…。やっぱするよね!ンフッ」
とてもいい表情をしていた。しかし幸代が海斗を想像してオナニーしていると思うと、どんな妄想の内容か興味が湧いたりしたが聞くのは止めた。
「知香ちゃん、いいやり方があったら教えてね!」
「う、うん…。(そこまでやりこんでないわよ…!)」
余計な事を言うと深みにはまりそうなので止めておいた。
とは言えすっかり壁を取りはらったかのような幸代に聡美も知香も心を許せる友達になったと感じていた。以前よりも親密になった。
「最近みんな私に優しいなって思うんだぁ。」
ニコッと笑う幸代に聡美は心の中で言った。
(それは優しさと気付けるようになった幸代ちゃんの問題よ?)
同じ言葉でも受け取る側の気持ち次第でウザく感じるものであり、また優しさと感じるものである。幸代は人の言葉を素直に受け入れられるようになったと言う事だ。しかしその代わり人にヤラシイ言葉を平気で言う人間になりつつある所はそのうち注意しようと考えていた聡美であった。