愛情の変化-3
(智美・・。智美・・)
2階へあがった祐二はまず夫婦の寝室をのぞいた。ベッドにはシーツが綺麗にかかっており、二人が交わった痕跡は見当たらない。しかし、窓が開け放されたままであるのは明らかに不自然であった。
祐二が次に向かったのは智美の部屋である。妻のプライベートを尊重し、ここに立ち入ったことはほとんどない。ゆっくりとその扉をあけた祐二の目に飛び込んできたのは、信じがたい光景だった。
部屋のなかは男女が交わった臭いで充満しており、床にはティッシュやいくつもの避妊具が落ちていた。しかしその避妊具をよく見ると、どれ一つとして精液が放出された様子がない。最初は妻を安心させるために着けていた避妊具を途中で外し、最後はいやがる妻のなかに放出する。まさかあの男が外に放出したとも思えない。
ベッドのシーツはグショグショに濡れており、どれほど交わればこれほどになるのかと恐ろしくなる。
(智美・・、まさか昨日の晩からずっと・・)
そのとき、祐二の目に入ったのは鏡台に置かれたビデオカメラだった。そのレンズはベッドに向けられている。祐二はすぐさまメモリーカードを抜き出し、自分の書斎に駆け込んだ。パソコンを立ち上げる時間さえもどかしい。
(まだ風呂から出ないでくれ・・。早く・・、早く起動しろ・・)
パソコンが起動すると、急いで自分のフラッシュメモリにデータをコピーする。サムネイルを少し確認しただけではあるが、あの男と妻との交わりが記録されていることが分かる。無事コピーを終えると、それをポケットに入れて急いで書斎をあとにした。
慎重に階下に降りていくが、幸いなことに二人はまだ浴室にいるようだった。鞄を抱え、音を立てないように自宅を出た祐二は、街中へと歩いて行った。
その後、祐二が向かった先はインターネットカフェだった。個室に入りパソコンを起動させると、フラッシュメモリを取り出した。ヘッドホンを装着し、記録された動画を確認する。そこにはいくつかのファイルに分かれて、合計6時間ほどの動画が撮影されていた。
帰宅時間のこともありその全てを確認することはできなかったが、智美が昨日からレイプされていたことが理解できた。智美が発しているみだらな言葉のいくつかは、男から強制されて言わされていることも分かった。
決して自分を裏切って浮気相手を自宅に連れ込んだわけではないと安心した祐二は、わずか2時間ほどのあいだに5回も射精してしまっていた。画面に映し出される他の男に抱かれる妻の姿、そしてヘッドホンから聞こえてくる妻の喘ぎ声が祐二を何度も勃起させた。
そこで得られた快感は今までの自慰行為、あるいは妻を抱いたときさえも遙かにしのぐ強烈なものだった。それは妻と同様、決して知ることのなかった、そして知ってはいけなかった快楽であり、これからの祐二を大きく変えてしまう劇薬でもあった。
その晩、祐二が帰宅したのはいつもより遅い夜10時ごろであった。この時間はあらかじめ妻にメールしていた。妻を犯したレイプ犯と顔を合わせたくなかったからである。しかし玄関のドアをあける際には、さすがに不安を隠し切れなかった。
しかしいつものように笑顔で出迎えてくれた妻と、変わらぬ室内の様子に安堵した祐二は、何もなかったかのように妻と接した。自分のために夜食を用意してくれる清楚な妻の立ち姿を見ていると、つい先ほどまで映像で見ていた妻と同一人物なのだろうかと疑ってしまう。
「あなた。わたし今日はなんだかとても眠くって。先に寝てしまってもいい?」
祐二は妻の事情をよく知っていた。昨日の晩から男に責め続けられた妻は、寝る間などなかったはずだ。妻に就寝を促した祐二は食事を終え、浴室へと入っていった。ネットカフェで5回も射精してしまった祐二もまた、大きな疲労を感じていた。
「智美・・。ついさっきまでここで・・、あんなに喘いで・・」
シャワーを浴びながら妻が見ず知らずの男にここで抱かれている姿を思い返していた。これまで他の男が近寄ってくることを恐れ、妻をパートにも出さず、町内会の会合にも滅多に参加させず家に閉じ込めていた。それは妻への愛情が深い故だった。それなのに、こんな事態になってしまい、その深い愛情は祐二のなかで別のものへと変わりつつあった。
その股間を痛いほどに勃起させた祐二は浴室から出ると、妻の待つ夫婦の寝室へと向かった。妻はもう寝ているかもしれないが、そんなことはどうでもよかった。とにかくこの行き場のない欲望を妻の身体のなかに吐き出したくて仕方なかったのだ。妻に対してこれほどの欲望を覚えたのは初めてだった。