離れて行かないで-6
◇ ◇ ◇
「はっ、はっ、はっ……」
し、しんどかった……。
畳の上に大の字になった俺は、息も絶え絶えになっていた。
横には、布団の上で俺に背を向けた格好で寝かせてある沙織の姿。
これが艶っぽい事の後であれば嬉しいのだけど、あいにく色気のいの字もない。
それもこれも、アイツらがみんなして沙織を置き去りにしていくから、こうなったのだ。
救急車を呼ぶため、電話を借りに行くと言った州作さんは、飲酒運転になるけれど車を出してくれた。
いけないことだとは重々承知してるけど、命に関わることかもしれないと思うとやむを得ない。
そこまではよかったのだが、みんなも沙織がぶっ倒れたことにパニクッてしまったのか、歩仁内、本間さん、石澤さん、果ては修までが州作さんについて行ってしまったのだ。
となると、残されたのは当然ながら俺だけで。
意識のない沙織を介抱することになってしまったのだ。
沙織を屋外にいつまでも寝かせとくわけにもいけないから、なんとか女子部屋まで沙織を運ぶことに。
正直、かっこつけたい所があった俺は、沙織をお姫様抱っこしようと持ち上げた。
……が、両腕に人間一人の重さがのし掛かる負担は半端ではなかった。
沙織の名誉のために言っておくが、彼女が重いわけでは断じてない。
ただ、俺があまりにもやしなだけなのだ。
途中、何度もおんぶにしようかとも思ったけど、その度に州作さんの姿が脳裏にチラついて、結局半分意地になって沙織をお姫様抱っこで二階まで運んできた。
連れてきてから、布団を下に運んだ方がもっと簡単だったって気付いたのはおいといて。
ほとんど感覚のない腕で布団を敷き、枕元には水と吐いてもいいようにビニール袋を張った洗面器を用意し、沙織の身体にタオルケットをふわりと掛けてあげた所で、力尽きたみたいに、俺も倒れ込んだつーわけだ。
沙織の容態を考えたら、まだまだ安心は出来ないけれど、やるべきことはやったはずなので、ホッと気が緩む。