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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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離れて行かないで-5

「みんな、沙織を寝かせるから手分けして用意……」


「おれ、兄貴についていくよ」


皆まで言い終わらない内に、歩仁内は大きな声でそれを遮ると、駆け足で州作さんの後を追った。


「は?」


何言ってんだ、アイツ?


ポカンと口を開けたまま固まって、歩仁内の後ろ姿を目で追っていると、


「あ、じゃあわたしも……」


「私も行く!」


と、本間さんや石澤さんまでここを離れようとする始末。


は? 何だよ?


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ! そんなみんなが行く必要なんてないだろ!? 沙織を寝かせてやんねえとダメじゃん!」


脱兎のごとく車に向かう歩仁内らを追いかけようと立ち上がった所で、大きな手が俺の肩を掴んだ。


見れば、ずっと俺と目を合わせてもくれなかった修が、真っ直ぐ俺の目を見つめていた。


「修! あんなゾロゾロ行く必要ねえだろ! みんな連れ戻して来いよ!」


意識が無い人間をほったらかしにするなんて、どう考えてもおかしいだろ。


石澤さんなんて、沙織の親友じゃん! 側についててやんなきゃダメじゃん!


捲し立てるように喚く俺に、奴は黙って首を横に振ったかと思うと、


「……オレも行ってくる」


「はああああ!?」


そう言い残し、俺に背を向けた。


バカか、コイツら!?


電波入るとこを探すか電話借りるかなんて、一人ないしは二人で充分なはず。


その間に残りの人間が沙織を介抱したり、病院に行く準備をする必要があるはずで。


まして着替えなんか必要になった場合、女の子がいないとまずいだろ。


それなのに、みんながみんな、車に乗ろうとするなんて!


「おい、修! 聞いてんのか、みんな沙織についててや……」


修の肩を掴んで足を止めようとしたが、逆に奴はその手をガッと掴み返し、


「……お前が沙織についててやれ」


とだけ言って、また俺に背を向けた。


やけに力強く握り返された手。真っ直ぐ見つめた瞳。


わけがわからないまま、俺は遠ざかる修の背中を呆然と眺めていた。





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