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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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離れて行かないで-3

だからといって、はいそうですかと納得できるはずもない。


「じゃあ、俺、電波入るとこ探すか、公衆電話探してくる」


そう言ってその場をあとにしようとしたが、案の定歩仁内に肩を掴まれ引き止められる。


「ダメだ、こんな辺鄙な場所、近くの民家までだって何キロ離れていると思ってんだ!」


「…………」


舌打ちをして、何度も歩仁内の手を振り払おうとしても、奴も負けじと食い下がってくる。


確かにこんな陸の孤島で俺のしようとすることは無駄かもしれないけど。……だけど。


「……大山!!」


平行線の状態に、ついに歩仁内が声を荒げたその時、俺は奴の襟ぐりを掴み上げた。


「でも、このままじゃ沙織が危ねえだろうが!!」


と、至近距離で怒鳴った。


一気に辺りが静まって、波の打ち寄せる音だけが相も変わらず呑気に響く。


「……もう止めてよ、こんな時に……」


シンと静まってしまったこの空間で、石澤さんがすすり泣きながら、振り絞るように言った。


「そうだよ、こんな時に喧嘩してる場合じゃないよ……」


石澤さんの身体を支えるように抱き締めつつ本間さんが俺と歩仁内を見る。


声を震わせながら、俺らを宥めた本間さんの言葉にいくらか冷静になって、掴んでいた襟ぐりから手を離す。


チラリと横目で沙織を見れば相変わらずグッタリしたままだ。


「歩仁内」


「…………」


「酔っ払ってぶっ倒れるなんてよくある話だし、救急車なんて大げさって思うかもしれないけどさ」


「いや、そんなことは……」


「それでも俺は沙織が心配なんだ。取り越し苦労だったらそれでいい。

沙織がこんなに苦しそうなのに何もしてやれねえのだけは嫌なんだよ。

だから、せめて電話探しに行かせてくれ。じゃなきゃ、電波入るとこでもいいから」


涙がボロボロ溢れて上手く喋れない。


そんな俺から、歩仁内は難しい顔で考え込むように目を逸らした。




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