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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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離れて行かないで-4

「車、出すよ」


その時ずっと黙っていた州作さんが、口を開いた。


背後から聞こえてきたその声にゆらりと振り返れば、何か覚悟を決めたような、真剣な面持ち。


「非常事態だもんな。

病院まではさすがに自信ないけど、電話借りに行くくらいの距離なら大丈夫だと思う」


「州作さん……」


「元はと言えば、オレが調子にのってアルコールなんか用意してしまったんだもんな。

……悪かった、大山くん」


そして彼は俺と真っ正面から向き合い、そのまま深々と頭を下げた。


だけど色んな思いが交錯して、それを素直に受け入れることは難しかった。


嫉妬はもちろん、沙織を間接的に危険に晒した怒りもあって 、まともに州作さんの顔が見れない。


見たら、殴ってしまいそうだったから、


「謝るのは俺じゃなくて沙織にでしょう」


と、にべもなく言っては彼に背を向けた。


「……ごめん」


「早く電話借りに行って、救急車呼んできて下さい」


悔しいけれど、ここでも沙織を助けてやれるのは俺じゃなくて、州作さんだった。





ウッドデッキに横たわる沙織の横にしゃがみ込む俺は、


「沙織、もう少し我慢しててな。州作さんに救急車呼んできてもらうから」


と声をかけた。


「大山くん、じゃあ行ってくるから」


申し訳なさそうに州作さんが俺の背中に声をかけると、ウッドデッキから離れていく。


トン、トンとウッドデッキを踏み鳴らす音がジャッ、ジャッ、と敷砂利を掻き分けるような足音に変わり、州作さんはこの場を後にした。



さて、救急車が来るまでの間、沙織をこんな固い場所にいつまでも寝かせておくわけにはいかない。


虫に刺されるかもしれないし、コテージの中へ連れて行かないとなんて思った俺は、みんなの方を見て口を開いた。




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