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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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離れて行かないで-2

「州作さん、車出してくれ! 沙織を病院に連れて行かねえと……」


この人に頭を下げるなんて嫌で仕方なかったけど、沙織の今の状態を考えたら、俺のちっぽけなプライドなんて屁みたいなもんだ。


とにかく沙織を助けなきゃ、頭ん中はそれだけで。


泣きそうになるのを何とかこらえながら、必死で州作さんの身体を揺すり続けた。


「ダメなんだ、俺も飲んじゃってるから……」


なのに奴は目を逸らせて申し訳なさそうに首を横に振る。


その瞬間、ブチッと頭の中で何かが切れた俺は、気付けば州作さんの襟刳りを掴み上げていた。


「ふざけんな! こんな非常時にいい子ぶんじゃねえよ!」


キレるとともにボロボロ涙が溢れてくる。


酒を無責任に飲ませやがって。


沙織を危険な目に合わせやがって。


飲酒運転は絶対ダメなのはわかるけど、こんな予断を許さない状況で、車一つ出せねぇのかよ。


ギリッと奥歯を鳴らしながら、俺はそんな類の罵声を州作さんに浴びせ続けた。


「大山、落ち着け! 飲酒運転で事故ったら取り返しがつかないんだぞ! 中川さんを危ない目に合わせてもいいってのか!?」


今にも殴りかかっていきそうな俺を、歩仁内が羽交い締めにして必死に叫ぶ。


そうだ、ここは山と海に囲まれた陸の孤島。


病院だって何キロも離れている。


そんだけの距離を飲酒運転して連れて行くのはやはり危険過ぎる。


じゃあどうすれば……。


その時、頭に光が射したような気がして、なお俺の身体を抑えつけている歩仁内に向かって叫んだ。


「じゃあ救急車だ! 早く電話……!」


だけどその一筋の光さえ、無情にも歩仁内は首を横に振る。


「ダメなんだ、ここは電波入んないんだ」


「そんな……、じゃあ固定電話……」


言いかけて、それは言わずもがなだってことに気付いて俯く。


一年に一度利用すればいい方だっていうこの別荘に固定電話を引くメリットを見つける方が難しいくらいで。


まして一人一台は携帯やスマホを所有するこの時代。


普通の家庭でも固定電話離れが進んでいるこのご時世だ。


歩仁内が申し訳なさそうに目を逸らすのを責めるのはお門違いだった。


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