終わりよければすべてよし-1
◇
「ん……」
うっすら目を開けると、見慣れない天井だった。
高くて開放感のある天井と、シーリングファン。
ボーッとした頭でそれを眺めていると、
「気が付いたか?」
と聞き慣れた声が聞こえてきた。
顔だけを横に向けると、輝くんがホッとした顔でこちらを見ている。
「あれ、私……食事してたのに……」
「お前、その食事の最中に倒れたんだよ」
「え!?」
ガバッと身体を起こすと、輝くんの背後にある大きな窓からは、さっきのレストランで見たような見晴らしのいい景色が見えた。
それだけじゃない、やたら広い部屋、広いベッド、フカフカのカーペット……。
わけがわからずキョロキョロ辺りを見回す私に、輝くんが口を開いた。
「ああ、ちなみにここはスプレンディード・ガーデン・ホテルの部屋な」
「え!?」
「あ、今日はここに泊まるから」
「え、な、何で!?」
全く持って意味がわからない。
わけがわからないでいる私に、輝くんはゆっくり、一つずつ話をしてくれた。
私が倒れた時、現場は一時騒然となったそうな。
でも、そこはさすが一流ホテルのレストラン。
スタッフの人達がすぐに救急車を呼ぼうとしたらしい。
救急車なんて大袈裟だ、と思ったけれど、食事中に倒れた場合、アナフィラキシーショックの可能性も考えられるからなんだって。
「だけど、その時にお前が意識朦朧としながらも『金華豚が〜』とか『ドルチェがまだあるの〜』とか喚きながらスタッフが電話するのを、脂汗をかきながら必死で止めてたんだよ」
「え、全然記憶にないんだけど……」
というか、ホントにそんなこと言ってたらかなりイタイ人間じゃん!
信じたくないけど、輝くんがクックックッと思い出し笑いをしているのを見てればそれは事実だと認めるしかない。
私の顔が瞬時に熱くなる。
「それでも強行突破で救急車呼ぼうとしたんだけど、すごい剣幕で止めるんだもん。まあ、呼吸困難でもなかったし、蕁麻疹も出てないし、何よりお前の料理に対する執念に負けてさ、結局は部屋で休ませて様子を見ましょうってことになった」
「……だからっていきなり部屋に泊まれるもんなの?」
一流ホテルの週末なんて、満室が当たり前なのに、こんな急に部屋を用意できるなんてありえない。
訝しげに眉根を寄せていると、輝くんはイタズラッぽく笑った。
「そりゃ、前から予約してたんだから泊まれるに決まってるだろ」
「はあ!?」
サラリと言う彼の言葉が信じられなくて、思わず何度も瞬きをして、その得意気な顔をまじまじ見つめた。