4. Speak Low-7
「悦子、すごいエッチだった」
額を寄せあって唇を突つき合いながら囁かれる。「燃えた?」
「なんか……、もっと会社の人に隠れてイチャイチャする感じでするんだと思ってたら、脅されるんだもん。……翔ちゃんがちょっと怖かった」
「悦子だって、最初の方、俺を怒ってる時、超コワかったよ」
平松が笑うと、悦子が拗ねた睨みを見せて、
「だって、翔ちゃんの口答えが腹立ったし」
と笑ったあと、改めて自分のブラウスを眺めて、「こんなに私のこと脅してすんのが興奮したの? 出し過ぎだよ」
たっぷり出された精液にブラウスが首元に張り付き、襟から中へ飛び込んだ噴射は正常の着座に戻った時に肌を流れ落ちてきて、キャミソールの下の素肌にまでトロリと滴ってきていた。
「すっごい気持ちよかった」
「途中であんなカッコさせるなんて聞いてないからビックリしたんだよ?」
「……でも、……よかったでしょ?」
「……はい」
悦子が照れた笑いを見せると、平松は精液に塗れたブラウスの上からバストへ染みこませるように揉みほぐしてくる。バストへの愛撫のそもそもの心地よさに、平松の夥しい放出による滑りが加わって、悦子は小鼻が膨らむほど熱い息を漏らす。
「ホントに会社でエッチしようとしちゃ、ダメだからね?」
「悦子も、オナニーしたらだめだよ?」
「するかっ!」
悦子は平松の鼻を摘んで捻った。
「いたい。……でも、こんなのしちゃったら、余計したくなるかも」
「ぜったいダメだっつーの」
付き合った当初から会社で恋人として振る舞うことは厳禁だったが、平松も悦子もお互い愛慕が強すぎて、終業後の時間だけでは足らないくらいになっていた。いつもけじめをつけてくれていたのは平松の方だったが、寝物語の最中に甘えながら問い質してみると、最初は悦子を恋人にしたい一心で仕事は仕事で頑張る思いが強かったが、最近は悦子が好きすぎて、会社で悦子を見てるとまとわりつきたい衝動をちょっと我慢している自分がいると自供した。本当にそんなことされて、万が一バレたら、下手をすれば懲戒モノだ。だが、好きすぎて、とか言われると、嬉しすぎて、ということで、クローゼットに並ぶ中から平松に選んでもらった会社用の衣装を持ってラブホテルに行き、仮想でならということで平松の欲求に応えてやることにしたのだ。横浜近辺だと誰に会うかわからない。だからわざわざ京急に乗って、しかも普通電車しか停まらない大森海岸までやって来ていた。この辺りは得意先もない。知り合いが住んでいるとも聞いたことがない。
別にこんな『プレイ』をしていると聞いた誰かに何を思われようが構わない。もちろん誰にも言うつもりはないが、とにかく平松が喜ぶことをさせてあげたい。そして上半身に浴びた平松の体液の量と濃さを見るにつけ、やってあげて良かったと思う――。
「あーっ!!」
悦子は平松にバストへの愛撫を受けながら、身を横に向けて更に平松にくっつこうとしたところで、視界に映ったスカートに声を上げた。「スカートまで飛んでる!」
「あ……、思いっきりついちゃったね」
平松が悦子の叫びに手を止める。悦子のタイトスカートの腰骨の辺りに、一条の白濁が飛んで付着していた。
「ついちゃったじゃないよっ……、もぉっ、スーツは汚したらダメって言ったじゃん」
「クリーニングに出したら?」
「恥ずかしすぎて出せないよ……。自分で染み抜きするしかない……」
「ご、ごめん」
悦子はグッと平松のワイシャツの襟を両手でつかみ自分の方へ引き寄せた。
「……。……じゃ、償いとして」悦子は平松の下半身に手を伸ばし、ワイシャツからはみ出している硬い男茎を握って艶めかしく扱いた。「……ベッドでもっとイジめて」
平松も悦子の愛撫に呼応して、手をスカートの中に差し込んで指先で秘門をクチュリと弄って来たが、悦子はもどかしげに頬を染めたものの目を細めて平松を睨んだ。
「やっぱり……、訂正。イジめる前に、さきにコレ欲しい」
「欲しい?」
「うん……。挿れてほしい」
「ください、は?」
悦子は平松から離れ、ゆっくり立ち上がるとタイトスカートの腰を解き脚から抜いて投げ捨てた。じっと様子を追ってくる平松の視線を感じながら、ローテーブルに手をついて、平松の高さに合わせるように長い脚を大きめに開いて膝を少しだけ曲げると、背中を反らしてヒップを突き出した姿勢になった。
「翔ちゃんの……、チンポください。いっぱいおかして」
髪を精液に濡れた頬に垂れこぼした顔を振り返らせて妖しい視線で平松を誘うと、眺めていた平松の男茎がワイシャツを揺らすほどビクビクッと跳ねたのが見えた。ブラウスに裂かれたストッキング、パンプス姿で背後に秘部を晒している悦子に興奮した平松が真後ろに急いでやってくる。
亀頭がむき出しの秘門に圧しつけられ、背が優しく撫でられて身震いを起こされた後に、ゆっくりと埋められてきた。悦子は腕を伸ばし、背を反らせて高い声を上げた。
「んっ……、やっ、翔ちゃん、また……、つけてないでしょ?」
「だって……、今日の悦子の中、すごそうだったから。……じ、じっさいすごい……」