白き流路-4
慎吾の性器を弄りながら、サトミは自分で熱い股間を擦りだした。
それに気づいた慎吾はこう言った。
「母さんにもしてあげるよ。」
「ダメよ、それは・・・」
「なんで?」
「だって・・・母さんなのよ。」
「母さんじゃないか。」
「とにかく・・・ダメなんだって・・・」
サトミは濡れた指先を慎吾に見せて、それをぺろりと自分の口に運んだ。
どういうつもりなのか、自分がこの子の母だと言い張っている。
また、気が遠くなってきた。
喉の奥に何かが詰まって息を塞ぎながら、胸からゆっくり上がって来るような不快感を覚える。
口の中に生ぬるいものが溶け出してきて、それはどろりと喉の奥を呑み落とした。
その時に私はもう完全に意識を失って、どろどろとした濃い霧の中を彷徨いながら次第にそれに溶け込んでいく思いがする。
慎吾はとても素直に思えた。
少し前、中学校に通い始めたぐらいの頃はこんなにあどけなくて、背丈だって私より少し高いかってぐらいだった。
食器を重ねてシンクに運ぶ。
水をひねり出して、それをさらしながら残りの食器を集めて重ねる。
主人は夕刊を開きながら、改めてテレビのニュースを確認するいつもの一見無意味そうな日課を果たしている。
まだ食卓に座っている慎吾は何気なく合った視線をはにかむような笑顔に変えた。
対して私は一瞬、その視線から逃れようとした。
そうはしたものの、これではいけないと思い直して黙って微笑み返した。
私はきっと体調が悪いのだろうと思う。
それよりなにより、夢と幻想と現実との区別がはっきりとしない事の方が深刻なのだろう。
それであっても、母子の関係がうまくいってれば何よりそれでいいと思い始めたのだった。
今こうして考えている事さえも、果たして現実なのかどうかは私にはすでに分からないのだけど。
ある昼下がりの事だった。
パートの仕事にはローテーションがあって週に二日交代で休みになる。
私は希望して日曜日は必ず休みを摂っているけど、その他の日は特に希望もなかったので休日も変則的になる。
だから連休というものをここ数年とった事はなかったわけだけど、問題はそんな事ではなかった。
「母さんってば・・・」
嫌な胸騒ぎがして、今日は出かけてしまおうかと思っていたけど結局ひとりでどこへ行く事もできなかった。
その胸騒ぎとはだいたいこう言った事だったのだけど、それを避けていたんじゃキリがないのも本当のところだろう。
慎吾は帰宅すると着替えも済まさないうちに私の胸を後ろから揉みだした。
こんな事でも上手になったものだと妙な感心もちょっと交えながらもいうまでもなく、体を求められている。
ふと、思う事に乳房を触られる事に感心するほど私の心にもちょっとは余裕が出てきたのかも知れない。
それはいい事なのかどうか分からないけど、私はずいぶん気持ちが落ち着いていた。
もちろん、今までに比べてという意味だけど・・・
何も言わずに素知らぬふりでこれをやり過ごそうとした。
ひとまずはあきらめたのか、慎吾は自分の部屋に入っていった。
そう、その年頃の男の子たちと同様にひとりでなんとかしてくれればどんなに気が楽かと思ったりする。
やはり悪戯に裸を見せたりしていた私が悪いのだろう。
そんな事を思えば、膨れっ面であきらめて立ち去ったあの子の表情にまた悪い胸騒ぎを感じだしてきた。
あぁ、いけない。また始まってしまう・・・胸を押さえて俯いた私。
心の中ではそれこそ誰かに助けを求めたい気持ちだった。