3. Softly, as in a Morning Sunrise-4
悦子は唇を噛み締めて下腹の戦慄に耐えた。下腹部が甘痛く疼いてきた。下肢に力を入れて緩みそうになるのを耐えている間に、平松は翳りの無くなった脚の間にローションを塗る。
「ヒリヒリする?」
剃毛された後は肌がヒリつくものだと思っていたがローションもしみず、そんな痛みは全く感じなかった。
「だ、だいじょうぶ」
「……無くなったよ、悦子。見て?」
ゆっくり瞼を開いて脚の間を見下ろすと、発毛以来見慣れていた下腹部の黒い毛は消え失せていた。従って、ここまで大胆に脚を広げてしまうと、ムキだしになった秘門の狭間がくっきりと見えた。
「やぁっ……」
思わずバランスを崩して片脚を湯船に落とし片手で隠した。「な、なんかポツポツしてるし……」
指先にはヘアの剃り残しを感じる。
「あまり深剃りすると荒れちゃうからね」
なぜそこまで知っているのだろう。恐らくは今日のためにネットで調べたに違いない。アブノーマルな淫欲に悪寒を覚えなければいけないところだったが、ふとそこまで自分に執着してくれてるんだと思えて喜悦が湧いたところへ、バリカンを置いた平松が落ちてしまった脚を再び湯船の縁に乗せさせて、肩に担ぐように悦子の股間に顔を近づけてきた。
「手、どけて?」
「ちかい……」
「近くで見るんだから当たり前だよ。見せて」
拒絶とも歓喜ともつかぬ呻きを漏らした悦子は、甲に平松の視線を感じている手を横に外した。平松の視界と自分の淫貪な場所には何もないことは、股間に流れ込んでくる外気でまざまざと分かった。平松が両手で残る剃り跡を指の腹で優しく撫でて、かつてあったVラインから徐々にIラインへと降りてくる。
「み、見ないで……」
「丸見えだよ」
「やっ……。げ、幻滅した?」
「なんで?」
「そ、その……、い、色とかっ! もぉっ……、何言わせんのよぉ……」
見られているところをとても見れない悦子が鼻にかかった声で言うと、平松は柔らかな丘を両側から指で抑えて左右に広げた。「やあっ、ちょっとっ」
「すごくキレイだよ。悦子のおまんこ」
直截な言葉で言われると、讃えられた嬉しみとまじまじと見られる羞恥で頭の中が混濁してくる。開いた下肢への意識を油断して瞬断してしまったとき、指で開かれた小さな穴からしぶきが飛んで湯の中に落ちた。
「わっ……、や、ち、ちがう……」
「漏らした?」
「だ、や……」先ほど刹那に感じて押し止めた尿意が抑えられなかった。「……だ、だって、スースーするからっ」
「いいよ、見せて」
平松は立ち上がると強引に悦子を立たせて回れ右をさせた。背後から抱きすくめられて片脚を縁に乗せられると、両側から前へ巡らせた両手が門を再び引き開いてくる。一度漏らしてしまって噴出の勢いを抑えられなくなっている上に排泄口が外気に晒されて悦子の歯が鳴った。大阪以来だ。あの時も下着を履いたままという乱痴気な行為だったが、それが故に排泄する場所は隠されていた。今は全て見られている。
「んっ……、翔ちゃん、おねがいっ。き、……嫌わないでっ、……やぁっ!」
うわ言のように言いながら尿道口を緩めると、奔流が湯船の中へ勢い良く噴き出していた。湯面を叩く音が浴室に響く。
「大丈夫。嫌いになんかならないよ。もっと好きになる」
平松は下腹部から手を離し、悦子の媚稜へ手を差し入れると、まだ続いている奔流が手を叩くのも厭わずその奥の入口へ指先を差し込んでくる。奔流を手首に直撃して四方へ飛沫を撒き散らさせながら、剃毛と放尿で温潤になった悦子の内襞を指先で擦ってきた。
「やっ、き、汚いよっ」
「汚くない。悦子のなら平気だよ」
「んっ……」平松にそう言われて背筋を走る戦慄にブルブルと身を震わせた。「……翔ちゃん、好き。お願い、キス……」
勢いは失ったがまだ平松の手のひらへ溢れだす排尿を続けながら身を捩って平松の唇を探した。迎えに来てくれる。呻き声を漏らしながら悦子は唇を貪った。
「……悦子の体は俺のもの、そうでしょ?」
「う、ん……」
「今日、アソコの毛剃ったのはその証だよ? ……誰にも渡さないからね?」
キスの狭間で言われて、悦子は平松の指を襞壁で締め付けながら、
「んっ……、か、体だけじゃない、……しょ、翔ちゃんっ……、わたし、ぜんぶ……、ああっ!」
と浴室に声を響かせた。
「――ド変態なんだよね……、あいつ」
思い出す顔で頬杖をついてチョッカラの先でカクテキを突つきながら悦子が呟いた。
「ちょっと待って、悦子。やっぱいい」
証が何とか言っていたが、何やらとんでもないことを聞かされそうな気がした美穂は悦子の説明を辞退した。
「やっぱり、何でも軽々しくさせるって、よくないよね」
何でも、って、何させてるんだろう? あの平松の容姿を思い出して、どちらかと言うと引っ込み思案ぽくて、サカってしまった悦子がリードしまくってるのだろうと想像していたのに、変態だと言われるとあらぬ想像を巡らせてしまう。