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エスが続く
【OL/お姉さん 官能小説】

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3. Softly, as in a Morning Sunrise-21

「わ、わかりました……」
 これくらい脅しておいたほうがいいだろう。美穂はふっと息をつくと、
「じゃ、ハニーに替わってあげる」
 と言って悦子に電話を戻して立ち上がった。涙目で見上げている悦子の頭をポンポンと叩くと、これまで悦子に助けてもらったのを少しは恩返しできたかなと思いながら床に転がっているボンテージ衣装を紙袋に戻してローテーブルに立てかけてやった。
「うん……、うん……。……なんで信じてくれなかったの?」
 ベッドに座ったまま、甘ったれた声で電話を続けている。そんな声出すんだこの子。とにかくこれで一件落着。ヒロくんにマンションの前まで車持ってきてもらおう、と美穂は夫に向けたメッセージを打ち込み始めた。
「そうだよぉ、私、アソコの毛まで剃ったのに……」
 何か聞こえた? いや聞こえてない。きっと聞き間違いだ。「……え、やだよ。……踏むのはやだって言ってるじゃん……。え? うん……、うん……、……、ほんとう? ……うん、何でもさせてあげるって言ったよ」
 聞こえない聞こえない。夫からすぐに了解とメッセージが帰ってくる。あのぅ、私そろそろ。
「わかった……。じゃ着て待ってる……。早く戻ってきてね」
 悦子は電話を切って、はー、と長い息を漏らすと、「戻ってきてくれるって」
 聞いてたよ!
 だが美穂を見上げている悦子の涙に真っ赤になった瞳の中に輝きが戻ってきていたから、うんうんと頷いて見せて、
「よかったじゃん。……じゃ、私ジャマにならない間に退散するね」
 と優しく言った。
「え、ちょっ、……戻ってくるまで一緒にいてよ」
「やだよ!」
 美穂はローテーブルに立てかけた紙袋をチラリと見て、着て待ってるとか何とかっつってたけど、女王様スタイルの女と、スッピンに裸足でパジャマの女がマシュマロマン待ってる図ってシュールすぎるだろ、と思った。「いいじゃん、いきなり抱きついて思いっきり甘えて幸せにしてもらいな?」
 ちょうど夫からマンションの前に着いたよとメッセージが届く。
「じゃ、ダンナ下で待ってるから」
 悦子が平松に甘えてかかる図も想像しそうになって、もう会社で悦子がビシビシと仕事している姿をまともに見れないかもしれないという危惧を抱きながら玄関の方へ向かった。
「あっ、み、美穂……」
 ベッドから立ち上がって玄関先までやって来た悦子は、「あ、ありがとう。……本当にごめん」
 としおらしく言った。その声にぷっとふき出して、何言ってんだよ水くさい、と振り返って言おうとしたが、見送る悦子の姿を見て、
「……マシュマロマンが帰ってくる前に顔洗ったら? その顔にビビってまた出て行くかも知れないよ?」
 あのセクシー衣装着てあげるならね、と思いながら忠告した。




 バスルームの鏡に映った顔は美穂の指摘の通りメイクが剥がれてひどいものだった。だがクレンジングで全て落とした素顔も、泣きすぎて瞼が腫れて、自分でも満足できるようなものではなかった。
 バスタオルに髪を包んで雫を吸わせて、脱衣所に持ってきた紙袋からショーツを取り出す。黒のTバックの素材はラテックスだった。両手で広げて脚を通していくと、身に絡みついてくるようにゴムが下肢を絞めつけてきた。
(穴……!)
 よく見るとショーツの前面は裂口となっており、ゴムを伸ばすと前が開くようになっている。それを知ると顔を赤らめて、隠すようにローライズのホットパンツを履いた。それもあまりに少ない布地のため、背後を覗き込むと脚の付け根ギリギリまで裾が食い込んでいて、もしも悦子が油断して体を緩めてしまっていたら尻肉がはみだしているところだったが、幸いにして怠らなかった悦子のヒップは赤いエナメルの光沢に密着されて、艶かしい丸みの容美を呈している。紙袋の中を探したがブラは入っていなかった。代わりに取り出した同じく赤いビスチェのバストの裏地にコットンが打ち込まれてあるから直接着るのだろう。後ろのファスナーを上げると、背中は大胆に開いていながら上躯を締め上げてくる。腹部に編み上げられている紐を緩めて調節するのだろうと思ったが硬く結ばれていて解くことはできなかった。目の細かい網タイツを美脚に通し、ピンヒールのシルバーのサンダル以外を身に纏うと脱衣所の鏡に身を映した。
(超似合う)
 バスタオルを頭から取ると、まだ幾許の水分を含んで濡れ萎っている髪が肩口まで垂れる。鏡の中には女王がこちらを見つめていた。ムチやロウソクは入っていないが、持てばさぞかし様になるだろう。
 悦子が心配しているようなことにならないから安心して。
 電話の向こうで平松が言っていた。だからそれを信じて着て待っていると言ったのだ。だが装備した自分の姿のあまりに気高い妖美さに本当に大丈夫かと危ぶまれてくる。悦子は腕を上げ下げしたり、肩や腰を捻り、脚をクロスさせたりしながら、高圧的でなく少しでも手弱やかで女らしく見えるポーズは無いものかと探したが見つからなかった。濡髪の野生的な印象がそうさせているのか髪を乾かし、まっすぐに整えると余計に妖艶さが増したような気がする。そうか化粧か、と思って悦子はドレッサーを目指して脱衣所を出た。


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