2. Sentimental Journey -4
「あんっ、あ……」
しゃくりあげながら腰を前後に揺らしていると、手首を持たれる。手のひらに熱い、硬い肉柱の感触。平松に導かれるままに顔のすぐ前の男茎を握らされた。
「すごいエッチな顔してるよ、悦子」
「うあっ……、やっ……」
顔を隠したくても、もう一方の手は体の下だ。横顔に視線が降り注いでくるのを感じながら、悦子は耳まで真っ赤にして平松の腿の上でかぶりを振った。
「ソレ、欲しいでしょ?」
付き合って一ヶ月、一夜での回数が多すぎて、総回数はもう思い出せない。だが平松のそれに触れたのは初めてだった。握った手の中で怒張の血潮の流れを感じる。男茎を握ったのは初めてではない。仰向けになった男を立って見下ろして、パンプスを脱いだ足先で踏み、ストッキングに包まれた足指で揉むように責めた。その愛撫と美脚の光景に忽ち最高潮まで勃起させると、頃合いを見計らって四つん這いでまたがり、逆手に握りこんでしごきながら、見下ろして侮蔑の言葉を吐きかけて爆発しそうな瞬間に手を緩めて焦らした。男たちは喘ぎ声を上げて身悶えし、早く射精させてくれと懇願してきた。
そんなことをしたいわけではなかった。付き合っている恋人とセックスするにあたっては已む無いと思っていたから、誰彼なくそうしてきて責める要領が分かっていただけだ。自分から望んでしたいなんて思ったことは一度もない。
平松の男茎も、握ってくれと言われて握ったという点では同じだったが、まるで違う。握らされた瞬間、離したくなくなって、言われてもいないのに少し手首を上下させて扱いていた。片手で握っても相当な長さだ。今までの男と比べるのは平松に失礼だとは分かっている。だが比べ物にならないほど大きいし形が愛おしい。
「ほら、悦子。欲しいって言って」
中指がクリトリスに振動を与えてくると、悦子は嬌声を上げて男茎を握る力を強めた。自然と平松の指の律動に合わせて扱いてしまう。体をイジられながら男茎を扱く行為じたいが、悦子を妖しい気持ちに駆り立てていって、明るい部屋の中でその全てを見られていても止めることができない。
「んっ……、欲しい……」
横顔のまま、薄目を開けて平松を見上げた。悦子を翻弄する言葉を吐きながらも、平松も顔を上気させて見つめ続けていた。亀頭近くの敏感な場所に指を及ばせると、枕にした脚から平松の反応が伝わってくる。
「き、気持ちいい……?」
思わず訊いてしまっていた。
「きもちいよ、悦子にしてもらうの」
「はあっ……」
指がショーツの中に入ってきた。直接慈しまれた鮮烈さと、平松の言葉の嬉しさに身が焦げ落ちそうなくらいに熱くなって、
「おちんちん、欲しい。これ。すごく欲しいよぉ……」
と口走っていた。呻きを漏らした平松が、悦子を撫でながら顔を男茎のほうへ寄せさせてくる。すぐ目の前にあった。
「舐めて」
「……な、なめたことない」
「じゃ、悦子が初めて舐めるおちんちんになりたい」
言い方が直截だ。ムードを考えてない。だが敢えて明瞭に言われると逆に悦子は情欲を煽られて、尖端へ拳をずらして亀頭を握りこむと、余った幹から根元の袋へ舌を押し付けていた。まだ風呂に入っていないから汗の味が濃い。平松とはシャワーを浴びてからセックスをするなんて一度もない。悦子の匂いが好きだから、といつも一日過ごした体をそのままに抱かれた。風呂で洗っていない体を抱かれるのはたまらなく恥ずかしいが、平松は躊躇なく全身を唇と舌で愛しんでくれる。だから目の前の男茎がいかに男臭くても、悦子もまた平松を濃厚に感じたくて、舌を這わせることに全くのためらいがなかった。初めて舌先に触れる男茎の表面は皮膚の向こう側に女の体には決して無い硬度を呈していた。舌先に時折脈打つ振動が伝わってくる。初めての味覚も忌避なくむしろ悦子を更に燃え立たせていく。
「悦子のオクチ、気持ちいい」
「んっ……、私ももっとっ」
舌を這わせながら腰を揺すって催促した。ショーツの中で秘門を開かれ、指が挿し込まれてくる。舌を伸ばしたまま声を上げたから、唇の端から涎が垂れ落ちていった。指が熱く潤った中を進み、襞の一つ一つを丹念に擦りながら、繰り返す伸縮に合わせるように指で圧迫してくると、悦子はもうお構いなしに蜜を溢れさせていた。
「ビチョビチョだよ」
「うあっ……、い、言わないでよ、そんなこと……」
「グチョグチョ」
「う、うるさいっ……」
端から聞いていたら馬鹿々々しいような卑猥な言葉も、悦子を醒めさせることなくより一層イヤラしい気分にさせて男茎に吸い付かせた。
平松に言わされた言葉は真実だ。コレが欲しい。すごく欲しい。
「悦子……。このまま出していい?」
「……えっ」
首を上げて握りこんだ尖端近くまで舌を這わせていたところへ言われて思わず見上げた。