2. Sentimental Journey -3
だから平松の指が脚を開いて膝を付いているために窮屈に捲られたスカートの奥に触れた時には、下着の中心は夥しい蜜を含んでいた。
「もうこんなに濡らしてる」
指先に感じる滑りで分かるだろうに、わざわざ目を見て言われて悦子は頬を真っ赤にして唇を噛んで睫毛を伏せた。嫌だ、と身を翻して指から逃れるわけにはいかない。触れられた瞬間、堰が外れて次々と蜜が垂れ溢れる。これを自分からやめるなんて、体が動くわけない。
「……スーツ汚れちゃう」
シワになるよりそちらのほうが心配だった。人差し指と薬指がクロッチの両側をなぞるだけで、脚に溢れてくるんじゃないかという危惧がおこる。真ん中の中指が本気で柔らかな丘に擦りつけられたら、いつものあのはしたない反応が始まってしまうだろう。平松の手がファスナーに手を掛ける。悦子の丘に触れながらマーメードシルエットのタイトスカートがヒップの丸みを滑り下ろされていった。手に導かれながら片脚ずつ抜く時も、悦子は平松の唇から離れることができなかった。
「俺のも脱がして」
男に衣服を剥がれる快感に浸っていると、平松の声が聞こえてきた。唇から糸を引いて離れた悦子が、脚を開いて座っている平松のスウェットに手をかけると、平松が腰を少し浮かせて扶ける。スウェットのズボンが平松の緩んだ尻を抜けようとすると、
「ちがうよ」
と指摘された。
「え……?」
「パンツも。もうすごく勃ってる、……悦子が大好きなコレ」
「んっ……、そんなことないっ」
言われてすぐに脱がそうとしている平松の下半身の真ん中で、いつもなかなか萎えずに自分を愛し続けてくれる首謀が漲ってる姿が頭に浮かんだ。早くそれにまみえたいし、たくさん愛されたい。平松の言うとおり、それが好きだ。だが言い方が悪い。
「そんな、人をインランみたいに言わないで」
拗ねたような声で引き下ろす手を止めていると、平松が後ろ手に付いて倒していた身を起こし、頭の後ろを抱き寄せて、
「欲しいでしょ?」
と囁いてきた。言ったら本当に淫貪な女と認めてしまうように思えたが、たまらなく欲しくなっている。だいいち、ずっとキスをしていたかったのに、平松を脱がすために唇を離していて寂しくなった。
「欲しい」
仕事頑張ったんだもん、これくらいいいよね。そんなことないと言ったのをすぐに翻意した自分へ心の中で言い訳しながら、会社では決して発しないような甘えた声で平松を見つめた。頭を撫でられると躊躇が効かなくなってくる。平松は深いキスを求めているのを知っておきながら、悦子の唇を啄んで、
「なにが欲しいの?」
と囁いてくる。
「んっ……、何でそんな言わせようとすんのっ……!」
ちょんとしか与えられない唇の感触に悦子が震えながら焦れた声を漏らした。
「悦子に言わせるの好きなんだ」
「へ、変態じゃんっ」
「脱がして」
狼狽しているところへ敢然と言われると、悦子は唇を突かれながら、途中まで脱がしていたズボンと一緒にトランクスも引き下ろしにかかった。キスをしながらだからそこは見てはいない。だが途中で引っかかりを感じて、視界の隅に屹立している肌色の柱が映ると、まだ中心を触ってもらっていないクロッチの染みが更に広がった。
「悦子」
頬を撫でられて至近で目を見つめられる。劣情が滲んでいる端麗ではない顔貌を見返すと、瞳を逸らすことができなかった。「言ってみて?」
「……な、何て?」
「『おちんちん欲しい』って」
「なっ……! そ、そんなの言わないっ……」
何言わせようとしてんだよ変態。恥ずかしすぎて言えるわけない。調子に乗らせないように何と平松を窘めてやろうか頭を巡らせて考えようとしたら、中指がクロッチの表面を撫で上げてきたから、軽くなぞるようなタッチでも悦子の思考が鈍化される。
「言わなきゃ、しないよ?」
「ず、ずるいよっ……」
身をくねらせながら、深いキスで紛らわせようとしたら顔を引かれた。
「言ってよ。……悦子に言ってもらいたい」
「何で、そんなエロいことばっか言わせようとすんの……?」
「悦子みたいな普段キレイでカッコイイ人が言うの、すごい興奮するじゃん」
中指がクリトリスを捉えて薄布越しに弾かれると、悦子の腰が何度も跳ねて余計に指先が擦れる。
「やっ……」
「悦子。しなくていいの?」
「するっ……」
平松は四つん這いで覆いかぶさって来ていた悦子の肩を掴み一旦身を起こさせると、脚の付け根まで脱げていたスウェットとトランクスを片足ずつ抜き取った。下肢を露出した姿で、片脚だけ伸ばして脚を開く。その間もショーツの中心をイジられながら、クリトリスに与えられる快感と、見下ろした先で緩んだ腹にくっつくほどに真上へ屹立している男茎を見せられて、平松の意図がよく分からないままに彼に任せていると、やがて腕を伸ばした脚の方へ引かれていった。寝転べということだ。平松の太ももを枕にして身を横たえさせられた。横臥したまま膝を立てさせて開かされる。開いた脚の中心へ更に指が押し付けられた。