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エスが続く
【OL/お姉さん 官能小説】

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2. Sentimental Journey -2

「いいの?」
 もう一度平松に背後から問われる。よくねぇよ。悦子は少し俯いて背を向けた座り姿のまま後ろににじり寄った。じっと黙って待っていると、平松が悦子の肩に手を延ばして更に引き寄せてくる。背中が平松の胸に触れると首元に腕を回されて、
「……いいの?、って訊いてる」
 そう耳元で三度目の問いが向けられると、悦子はその胸の中へ凭れていった。柔らかい肉が心地よい。平松の恋人となった翌月曜日、朝一番に美穂に呼び寄せられて物陰でどういうことだと尋問された。そう訊かれても酔って憶えていないのだ、と言ったら呆れられた。それから、でも大丈夫、付き合うことにしたから社内にはナイショにしてねと言ったら、美穂は膝から崩れそうになっていた。何で平松みたいな男に、と露骨に言葉にはしないが顔がそう言っていた。自分でもよくわからない。いくら親しい美穂相手でも、端的にセックスが気持ちよすぎたなどという言い方だと失神するかもしれないからやめておいた。
 事の次第はもう少しややこしい。何故彼女になるなんて言ったんだろうと、素で平松を見る度に自分でも不思議だった。背後から抱きしめてきている男は、世の中の大半の女から見たらお世辞にもカッコいいと言えるタイプではない。それに抱き寄せながらすぐにバストに触れて来ようとするそのイヤラしい手。悦子が紐解くまでは女を知らなかったのだから、抱き方が上手いというより、うまくハマったとしか言いようがない。仕方ない。その男茎で深々と貫かれて、体を押さえつけられながら快楽に浸されて、彼女になって、とじっと眼を見られて言われた時、この男にこの先もこうして抱かれたい、彼女になったらそうしてもらえると思ったのだ。この気持ちの次第を、朝での簡単なヒソヒソ話で美穂に説明し切るのは難しいのだ。
「……する」
 前を向いたまま悦子は呟くように言った。
 こんな私を見たら美穂は嘔吐するか絶叫するだろうな、と思いながら、
「疲れたよぉっ……」
 と豹変して甘えた声を出した悦子は身を捩らせて反転すると、柔らかい体に抱きついて顔を埋めた。平松が背中を抱きしめて自分の体に押し付けてくる。緩んだ肉に包まれるようで気持ちがいい。早よ頭撫でんかい、と首に額を擦りつけたら、優しい手遣いで撫でてくれて早速悦子の体は甘美な疼きでトロけ始めた。手が髪を梳きつつ、時折頭をぽんと叩いてくる。ヨシヨシされているようで、また上からの立場で振る舞われている癪な気持ちが勃興するが、それを凌ぐほどの麗おしい愉楽に全身を包まれて、悦子は額だけでなく上躰も平松に擦りつけていた。
「こっち向いて」
 頭上から聞こえる。悦子はとろんとした目を向けて平松を見上げた。「大変だったね」
 ねぎらいの言葉とともに顔が近づいてくると、悦子は唇を緩めて平松を迎え入れた。吸われる度に声を漏らしながら、最初から深く入ってくる舌を受け入れていた。ぴちゃぴちゃという音が余計に悦子を駆り立てる。悦子は唇を密着させたまま四つん這いになって自分から体に乗り上がるように平松の脚を跨いだ。
「触って欲しい?」
「ん……」
 返事をする代わりに、悦子から舌を差し伸ばして平松の口の中を啜る。焼きうどんは失敗だったかも、とお互いの唾液に残る風味を感じながら、悦子は両手を平松の首に回して熱烈なキスで答えていた。
「触らなくていい?」
 いちいち聞いてくる。付き合い始めてから一ヶ月ずっとそうだ。恥ずかしがって瞼を伏せようが、ためらいながら頷こうが、それを無視して言わせようとしてくる。
「……いちいち訊かないで」
「言ってくれる時が可愛いから聞きたい」
 悦子が反駁する度にそう言われる。可愛いと言われて、年下のくせに馬鹿にして、と思う一方でニヤけそうになった。平松と付き合い始めて、そうなの、私って結構可愛いところあるんだよね、と自分で自分に和む時がよくあった。可愛いって言われちゃ、いくら歳くってても、女王様と呼ばれがちな女でも嬉しいものは嬉しいんだよ。
「さわって」
「どこ?」
「うーっ……! もおっ!」
 馬鹿じゃないの?、と唇を離して睨んでやろうと思ったら、頭を抱き寄せられ耳にキスをされた。ひゃっと肩を竦ませて悶える悦子の耳元で、
「どこ?」
 と訊かれる。弱い耳元で言われたいのはそんな言葉ではなかった。早よ名前で呼ばんかい。「……悦子」
 呼んで欲しいと最高潮に願った時に呼ばれて、四つん這いになって反らせていた背中にもどかしい身震いが走った。
「あ、あそこ……」
 平松が片手を延ばして、スカートを器用にたくし上げながら、膝を付いた悦子の太ももを摩ってくると、触って欲しいその場所が彼の来訪を懇願して、薄布の奥が蜜を泌み出そうと蠢き始めた。
「悦子、言わないと触らない」
「……。ば、ばかだろっ……?」
 苛立ったような声を上げた。言葉は知っているがとても言えない。平松が言わせたがっていると余計に言えない。だがそのせいで更にスカートの奥の焦燥が強くなって、目を強く閉じて平松の耳に唇を押し当て、「お願い、さわって。我慢できない」
 代わりに言った言葉も自分の声が耳に入って叫びそうなくらい恥ずかしかった。


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