思い通りにいかなくて-7
……私のお腹の音、聞こえていたんじゃなかったの?
グスッと鼻をすすりながら輝くんを見つめるけれど、ニヤニヤもしてないし、映画の世界に浸っている様子。
あの音が聞こえていなかった? とも考えたけど、あの静かなシーンで鳴ってしまった盛大な音と、隣の子供の噴き出した声と、泣きそうになるくらいの恥ずかしさは事実だ。
だから聞こえていなかったとはとても考えられない。
このままあやふやな状態なのはスッキリしないから、恥ずかしいけど訊ねてみようと私は彼に耳打ちをした。
「パパ、私のお腹の音……」
すると突然、耳打ちするのに添えていた手を、ガッと捕まれてそのまま指を絡ませてきた。
そしてそれは、輝くんの膝の上にそっと置かれ、
「いい映画だな、今度は瑠璃も連れてきてあげような」
とだけ言って、そのままエンドロールが流れるまでずっと手を繋いでいてくれた。
結局、彼は私のお腹の音については最後まで触れることはなかった。
本当に聞こえていなかったのか、気を遣ってくれたのかは、輝くんにしかわからない。
だけと、繋いだ手の力強さと温かさから、彼の優しさが伝わってきたような気がしたから、私もこれ以上は気にするのを止めた。
次で汚名返上しようと更なる闘志を燃やして、私もまた、 輝くんの手をギュッと握り返した。