四人の女-54
大東重文 三十三才
スーパー山瀬 社長
大東重文は、愛人の綿田美成の同級生で同姓の綿田文子から電話をもらった。
「今夜店にちょっと寄ってください、ご相談したいことがあります」
仕事が遅くなったので十時過ぎに重文は「バー文」を訪ねた。
「社長、すみません無理を言って」
「先日はありがとう、美成さんは来ていないんだね」
「美成は仕事の最中よ、お母様はまだ病院ですか」
「内臓の病気は長いね」
重文の母親の祥子は夫の死後スーパー山瀬の社長となって夫以上に事業を拡大して、息子の重文に社長の座を譲るときには関西地方に四十五軒の店舗を構える中堅のスーパーになっていた。
社長を息子に譲ると祥子は仲間の夫人達や職を退いた男性達と国内、海外と観光旅行を楽しんでいた。
今年に入って能登の温泉旅行を楽しんでいる途中で乗っていたバスが高速道路で誤って逆行してきた乗用車と正面衝突して乗用車の運転手は重傷、バスは運転手と前方の乗客七人ほどが打撲に骨折の負傷をした。その中に祥子も居て、脚を骨折して救急病院に運ばれた。
脚の負傷だけだというので、重文は大阪に連れ帰って地元の医大付属病院へ転医をさせた。
年齢もあるので、一度精密検査をしてはどうかという担当医師の申し出で検査を受けると、内臓に異常がありそのまま入院を続けている。
「重文さん、美成から電話よ」
「美成さん、文子さんから相談があるって来ているんだが、貴女は来れないの?」
「重文さん、ご免なさいね、アフターが入って今晩は帰れないの、文子さん重文さんが好きだと言っていたから、大事にしてあげてね、お願いね」
「店はもう終わりにします。重文さん、奥で飲みましょう」
重文の母祥子は二十八の時に重文の父親大東勲夫と知り合い結婚をした。
祥子は、二十才の成人式の日に両親を交通事故で亡くして兄妹もなく、祥子の両親は一人っ子同士で、親戚という姻戚関係の人も少なかった。
祥子は美人であったので、村の者達からの結婚の話が殺到したが、彼女が受け継いだ財産が目的という男の魂胆が見え見えなので、大阪に出て、思い切ってキャバレー、風俗界に身を投じた。
美人で気性が男が好むタイプで、ダンスも客が好むチークをためらいなくすぐに頬を寄せて踊る。二年もしないうちにナンバーワンになった。
アフターは週に一回か二回三ヶ月続けて来店してくれる指名客の中から後を引きずらない者を選んだ。それでも結構男と遊んだ。
「重文さん、何ぼんやりしているの、用意したわよ」
「なんだか悪い気がして」
「だれに?」
「文ちゃんのお客」
「いいわよ、この時間になったらもう来ないから」
「それで文ちゃん、相談って、何?」
「簡単なことだけれど、重文さんに頼まないと駄目だから」
「なにお、・・・・・・」
「一寸飲んで、ゆっくりと話すから、今日の私のドレスどう?」
「薄いのを着て、まだ六月だから寒くない」
「今日ネットで購入したのが届いたの、少し小さいけれど伸びるから・・・・・・・・・・・ホラ身体の線が奇麗に出るでしょう・・・・・・・魅力ある?」
「お乳が見えてるじゃない」
「それはストールで隠してちらちらと見せるの・・・・・・セクシーでしょう」
「腰から下が少し色が濃くなっているけれど、穿いているの」
「ノーパンよ、触ってみて」
「本当だ、大胆だね」
「触ってと言ったら前を触るの、ここを」
「そんなとこ・・・・・・」
「有線、好きな曲、踊ろう」
「そう引っ張らなくても、・・・・・・・・柔らかいね文ちゃんの身体」
「いいなー、重文さんに抱かれて踊るの、お願いはこの事ですの・・・・・・・美成さんばかり可愛がらなくて、文子も可愛がってね、美成に頼んだの」
「そんな無茶なこと、・・・・・・」
「瑠璃さんって言う娘としたんだって、美成さんの友達」
「美成さんに謀られてね」
「綺麗な人だってね、今度店に連れてきてよ」
「綿貫君、僕と同級の、彼のことが好きらしいよ」
「綿貫って駅の向こうの、土地を売らなかった・・・・・・・・・・、重文さん、当たってる・・・・・・固くして・・・・・・この前美成と来たときは何ともなかったのに」
「文ちゃん殆ど裸だもの」
「もっと固く抱きしめて」