クリスマスの夜に-4
「あんまり種類なかったんだけど、ミルクティーでよかったよね? 珈琲のほうが良かったら交換するけど」
「……いい、ありがと」
息を弾ませて戻ってきた達也の手から、無愛想に紅茶の缶を受け取った。
温かい。
両手でそれを包み込むように握ると、冷え切っていた体がほんのりと体温を取り戻していく。
隣に座る達也は、相変わらずニコニコと笑っている。
僕には、気を遣う必要なんてないよ。
きっと、心からそう思ってくれている。
だからこそ、これ以上甘えられない。
甘えたくない。
そう思う。
「ねえ、達也。もういいよ」
「え? なにが?」
「もう、平気だから。無理して、わたしのそばになんていることない」
「無理なんかしてないよ、僕は」
キョトンとした表情に、苛立ちがつのる。
嘘つきは嫌い。
どうせ、無理してるくせに。
泣きも笑いもしない、こんな女のそばにいることに、そろそろ疲れてきているに違いない。
「わたし、もうひとりでも大丈夫だから。いつも言ってるでしょう、さっさと他に彼女つくりなさいよ」
思いがけず、きつい口調になった。
達也が驚いたように顔を上げる。
「ええ? 僕だって何回も言ってるじゃないか、僕はマリちゃんと一緒にいたいと思ってるんだって」
「それ、迷惑だから。いつまでも、わたしの相手してる場合じゃないでしょう? 達也には……達也の幸せを考えてほしいの」
一瞬険しい顔を見せた後、達也はふっと表情を緩めて笑い出した。
それはもう、おかしくてたまらないというふうに。
馬鹿にされているようで、カッと頭に血が上る。
「な、何がおかしいのよ。こっちは真面目に心配してるのに」
「あはは、ごめん。マリちゃんの口から、僕の幸せなんて言葉が出るとは思わなかったから」
「……どういう意味よ」
「うーん、僕のこと、一番困らせてるのは誰なんだよ。あはは、だめだ、やっぱりおかしい」