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クリスマスの夜に〜公園で濡らされて〜
【幼馴染 官能小説】

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クリスマスの夜に-3

いまから4年前のクリスマス。
 マリは、ひどい失恋を経験した。
 相手は学生時代から付き合っていた、7歳年上の男。
 アルバイトをしていたカフェで知り合い、誘われるまま男女の関係になり、卒業したら結婚しようと言われていた。
 ところが。
マリが社会人になって実際にふたりの将来のことを相談しようとしたら、彼はあっさり断った。
 イブの夜、ディナーの途中で。
 
『結婚なんかできるわけないだろう、だって僕にはもう家庭があるんだから』
『いいじゃないか、このままの関係で』
『とっくに気づいていると思っていたよ。君ももう大人なんだから、もっと賢くならないとね』

 何を言われているのかわからず、目の前が真っ暗になった。
 彼は種明かしをする手品師のように、得意げにしゃべり続けた。
 ひとり暮らしをしているのではなく、単身赴任をしているだけだったこと。
 遠く離れた自宅では妻とふたりの子供が待っていること。
 もうすぐ三人目の子供が産まれる予定であることまで。

 マリにとって、彼は初めての恋人だった。
 ファーストキスも、初体験も、大切なものは彼にすべて捧げてきたつもりだったのに。
 背伸びしたオシャレをするためにお金をかけたのも、全部彼のためだったのに。
 一緒に楽しく過ごしてきた日々は、いったい何だったのか。
 
……本当に、好きだった。

 悔しいとも、腹が立つとも感じない。
 体が半分もぎとられてしまったような痛みだけが、しんしんと心に降り積もっていった。
『そう、知らなかった。さよなら』
 ようやく出てきたのは、その一言だけ。
マリは無表情のまま席を立ち、そのまま自宅に戻った。
 
 それから数日間、原因不明の高熱に悩まされ、まったく食欲がなくなった。
無理やり何かを口に入れても、すぐに吐き出してしまう。
 心配する両親には、何も言えなかった。
 でも不思議なことに、事情をきいて大慌てでお見舞いに来た達也には、すべてを話すことができた。
 
 泣きも笑いもせず、マリはただ淡々と事実だけを語った。
 話せば楽になる、なんていうのは嘘だ。
 自分の口からこぼれ出た言葉が、ぐさりぐさりと自分自身を突き刺していく。
 心が血を流し、音を立てて壊れていく。
 それでも、どうしてだか涙は一滴も出なかった。

 達也は話の途中で、頬を真っ赤にしたり顔色をなくして真っ青になったりしながら、最後には声をあげて泣き出した。

『ひどい、そんなのひどすぎるよ。マリちゃんは悪くないのに』 
『そんなやつ、僕が殺してやる。そいつに、生きている価値なんかない!』
『僕がいるよ、ずっとそばにいてあげる。マリちゃんを幸せにしてあげる』 

 当時、まだ大学生だった達也。
 純粋で真っ直ぐな言葉。
でも、そんなのはただの慰めだ。
いずれ達也も他の女の子と一緒にどこかへ消えてしまう。
 そう思っていたのに。
 あれからずっと、達也は約束を守り続けている。
 見返りのひとつも求めないまま、マリのそばに居続けてくれている。


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