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指嗾
【元彼 官能小説】

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指嗾-21

「やじゃねぇよ。ケツ洗わないと汚えだろ?」
 液体がどんどん腹の中へ流れこんできて、
「く、苦しい……、よおっ、ジョゼ……」
 甘えた声で縋っても流入は止まらなかった。冷たさに刺激されて忽ち蠕動を始めた直腸が液体を外に押し出そうとするが、更にピストンが進められて押し返される。
「やあっ……、せいふく、汚れる……。出ちゃうっ……、もう入んないよっ! ……ぬ、ぬいてっ!」
「ベッドの上で漏らすなよ?」
 ピストンを最後まで押し込むと、ジョゼが注入器の口を菊門から抜こうとするから、今度は崩落の不安が輝子を襲ってきて、
「だめっ、ぬいちゃだめっ!」
 と叫んだ。
「どっちなんだよ、お前」
 ジョゼが笑ったところで携帯が鳴った。輝子に注入器を射し込んだまま、目の前で電話に出る。
「おお、何? ……、……いや、今他の女とヤッてるとこ」
 腹痛に苛まれながら様子を窺っていると、ジョゼの耳元のスピーカーから、女の声が聞こえてくる。さっき出て行った女なのか、また別の女なのかはわからない。
 誰だ。ジョゼは今は私のだ。
「……いや、いまいいとこなんだよ。……そんなこと言うならお前、アナルさせてくれんの?」
 ジョゼは笑って話しながら輝子を一瞥した。浣腸されて苦悶に満ち、なのに不安に苛まれて見上げてきている輝子に嘲った顔を向けた。「イヤってなんだよお前。……じゃ、行かねぇ。今ヤッてる奴はさせてくれるって言ってるし。……なあ?」
 ジョゼが嘲笑のまま輝子に伺ってきた。
「ジョゼは私とするんだっ! 邪魔すんなっ!!」
 脚を開いて注入器を受け入れたまま、輝子は遠く離れた受話器に向かって声を上げた。
「……だってよ。じゃあな」
 ジョゼは携帯を切って、輝子の枕元にポンと投げ置くと、注入器を抜いてすぐに栓としてプラグを埋め込んだ。「……ちゃんとケツ絞めとけよ」
 ノブ型をした栓を括約筋で締め付けていると、腹部の圧迫感は重くのしかかってきたが、噴射の煩悶が和らいでいく気がした。こんな汚らしいことをしているのに、ジョゼは他の女のところに行かず残ってくれた。ジョゼの中で一番一緒に居たいと思える女になりたい。下腹からくぐもる轟鳴を立てながら、輝子は顔のすぐ側に落ちた携帯を見た。
「……ジョ、ジョゼ……」
「まだトイレ行くなよ? 時間置かねぇとキレイになんねぇらしいからよ」
「うん……、がまん、するよ。……わたし、がまんする」
 後ろ手を突いて、体に負担をかけないように身を起こした輝子はジョゼを見上げて、
「ね……、お姉ちゃんも、わたしみたいに、ヤラしかったの?」
 ジョゼと別れてから、夏を越え秋になっても愛里菜は新しい恋人を家には連れてきていなかった。食卓で話を聞いていても、今はモデルを本業にするために頑張っているところだから、恋人は要らないと言っていた。最近入った事務所からも、変な男と付き合ってスキャンダルになるなと釘をさされているらしい。
 ときどき輝子は夕食の席で少し会話に混ざるようになっていた。ジョゼと姉が別れてからだ。髪切った時からちょっとずつ変わってきたね、素直な輝子のほうが可愛いよ。姉が無邪気に言った言葉を輝子は忘れなかった。ジョゼはまだ姉に気があるのだろうか。自分は恋人にはしてくれないが、姉はまだ恋人にしたいのだろうか。
「お前みたいに必死じゃなかったけど、……、ま、そんな変わんなかったかもな」
 必死だ。分かってるなら、自分をジョゼのものにして欲しい。
「……やっぱり何回聞いても信じらんない、お姉ちゃんがそんな風になるなんて」
「なんだよ? 急にそんなこと言いだして」
 輝子はスカートの上から下腹を抑えて、
「お腹いたいから……、気をまぎらわせてる」
 とぎこちなく笑った。輝子の表情にジョゼはふっと笑った息をついて、
「……ま、かなり仕込んだから、もしかしたら俺ナシだと辛かったりしてな」
 並の男が言ったらバカな発言だったが、ここまで自分を翻弄するジョゼが言うのならそうかもしれないと思った。輝子はもう一度傍らに落ちている携帯を見た。
「携帯……、貸して」
「何すんだよ?」
 携帯を手にとっても特に焦った様子もなく、ジョゼはベッドに座って脚を組んで輝子を見ていた。
「……お姉ちゃんにメッセ、送ってみていい?」
「何て送るんだよ?」
 輝子はメッセージアプリを開いて打ち込み始めた。
『久しぶり。あれからどうしてる? お互い時間が経っていろいろ考えたことあるだろ?』
 輝子は黙ってジョゼに画面を向けた。
「色々ってなんだよ」
 ジョゼが笑うと、輝子も笑って、
「……色々。きっと、お姉ちゃん、色々考えちゃってるよ。そういう人だもん」
 と言って送信ボタンを押した。ジョゼと二人で携帯の画面を眺める。
「既読になったら、キスしてね」
「なんだそれ」
「ごほうび」
「何のだよ」
 そうしているうち、まもなくメッセージが既読になった。輝子が笑顔になってジョゼの方を向く。
「……返事かえってきたらな」
「ひどいよ」文句を言ったが笑顔のままでいれた。「……お姉ちゃんと、どれくらいの間隔でエッチしてたの?」


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