〈愚者達の夜〉-8
「……?」
異様な雰囲気を感じ取った咲良は、近付いてくるミニバンに向かって振り向いた……そこには開口部から身を乗り出した男の姿がある……突然の恐怖……身体も声帯も硬直した刹那、その幼体は暴力に曝された……。
「む"う"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ッ!!!」
小肥りオヤジはポケットから取り出したタオルを掴み、背中を向けた咲良の顔面に背後から手を回して押し付け、力一杯に抱き着いた。
バタバタと暴れる脚は首謀者に掴まれ、必死に藻掻く両手は長髪男に捕らえられてしまった。
『あ、暴れんな…クソッ』
「ぶぐッ!!ぐッ!!んぶッ!!」
『ドア閉めるぞ!気を付けろ!』
『出せ!早く車出せ!』
ほんの数秒停まっただけの車に、母親は注意を払わなかった。
その巨大な箱の陰で行われた犯罪に、愛娘の危機に、気付く事すらなかった。
『やっと失神しましたなあ……』
『ちょっと涙が滲んでやがる……「お母さん助けて〜」とか思ってたのかな?』
『ンククク……僕達の手で“親離れ”させてやりますか……』
セカンドシートの床に置かれた咲良は、首謀者と小肥りオヤジに身体を踏まれたまま、監禁部屋のある建物に連れ去られていく……その終着点は、そのまま咲良の人生の“終着点”でもある……。
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黴臭い湿気た空気が淀む部屋……オレンジ色に光る裸電球に照らされ、咲良の身体は暗闇に浮かび上がっている……。
『見て下さいよ。ちょっと背が高い小学生みたいですよぉ』
『やっぱり僕達だけで独占すべき娘ですよ。僕達だけの……』
『決まってんじゃねえか。俺達三人のペットだぜ』
部屋の中心に毛布が敷かれ、その上に咲良は寝させられていた。
ジーンズは脱がされ、タートルネックセーターと白いパンティーだけの、アダルトアニメの妹キャラのような姿にされてしまっている。
その寝ている咲良の身体に、薄汚い麻縄が絡み付いていった。