侵蝕の眼-1
行為直後の気恥ずかしさから、不易一文と呼ばれた少年は背を向けたまま言葉を口にしていた。
身体には邪悪なる欲望が巣食い、意識も本来の少年と入れ替わりはじめようとしてた。
それこそが恵利子の畏れていた存在…… 亡くなったはずの“叔父”に他ならなかった。
その眼は穢れ濁りながらも、欲し求め続けた対象を間近にし、妖しい炎が揺らめいていた。
それでも…… 少年の身体をほぼ意識下においても……
狂おしい程に欲し続けた対象を目前にしても…… 肉体的な限界を補う事は叶わない。
すでに夥しい量の体液を繰り返し吐出した少年の陰茎に、再び緊張を漲らせるには暫しの有余を必要としたのだ。
もしかしたらそれは異なる意識にその身体を入れ替えられた、僅か片隅に残る一文の意識による抗いとも思えた。
「ふっ、不易くん、今日の不易くん何か変だよ。何て言うか…… ちょっと怖い」
背を向けながら更なる欲望を口にする一文に、嫌な胸騒ぎと違和感を覚えた恵利子は身を起こし、脱ぎ捨てられた下着に手を伸ばす。
いずれにしてもこの日、穢れし情念と入れ替わった一文の肉体が、再び恵利子と交わる事は叶わなかったのである。
一時間後
帰宅した一文は…… いや、正確には不易一文と呼ばれた少年は、その内に巣食う穢れし意識は、数ヶ月に及ぶ恵利子との仮初の記憶をたどっていた。
それは自身が健在であった時の穢れを知らぬ“姪”と、今日偽りの肉体を介して知り得た“恵利子”との変容を知る為。
(それにしても、いったいこれはどう言う事なんだ? 俺が今までこの餓鬼に潜みながら視て来た限りでは、こいつが話に聞いた恵利子の彼氏と思われたのだが? それにしては今日目にした、恵利子のマンコの具合といったらどうなんだ? これは昨日今日“知った”様な具合じゃねえ! あれはたっぷり咥え込まされて、十分“悦び”を教え込まれマンコ!?)
抜き挿しが繰り返される結合部が、嫉妬に狂った“叔父”の記憶に蘇る。
髪の毛の様に細く繊細で疎らな恥毛は、淫欲の眼よりその秘密を覆い隠す事は出来ず、ほぼ全ての情景を露呈させてしまう。
本来であれば貫かれる痛みと羞恥に、その身を震わせる“姪”を叔父は思い描いていたのだ。
それが陰茎をより深く捕えようと、清らかなはずの二枚貝は膨らみと艶やかな潤いさえ帯びていた。
それは当初思い描いていた浅いスリットの“桜貝”ではなく、悦びを知った“クレヴァス”と言えた。
(ああぁぁ…… 恵利子のマンコの感触、締め付け…… を知りたい。味わいたい)
“叔父”は歪んだ想いを寄せ続けた姪に対し、失望を覚える様な事は無かった。
それでも“愛しい姪”の処女孔を貫き悦びさえも刻み込んだ対象に、狂おしい程の嫉妬とその正体を詮索せずにはいられなかった。
まだ不易一文と呼ばれた少年の意識に潜み、混在しながら目にし僅かな時間をその意識下に置き行動した記憶を紐解いていく。
(やはりアレがこの謎を解く鍵であり、その答えそのものであろう?)
その意識は11月25日より、9月某日へと遡りはじめていた。
それは憂う恵利子を懸念する一文と、“秘密”を探る叔父が不思議な同調を見せ始めた時の事。
一時的にではあったが一途な想いと邪な意識は融合し、ひとつの目的に向かい行動を共にする。
そこにはかつて恵利子の叔父として健在であった頃の記憶が、荒唐無稽とも思われる行い全てを可能にさせる。