新人・裕也-3
「鈴木君さぁ、、、」
「あ、鈴木でいいですよ。ずっと年上の人に君づけされたらなんだか…」
「それもそうか、下の名前は何て言うの？」
「裕也です。」
「裕也君か、じゃ裕也って呼ぶよ、ね？」
「はい、それでも(笑)」
裕也は結構いけるようで、早々と３杯目の生ビールをおかわりしていた。
若いだけあって食欲も旺盛だ。
「よく飲むねぇ、、、裕也は流行りの草食系男子かい？」
「う〜ん、よくわかんないですけど…綾瀬主任からしたら俺は草食系かもです。」
裕也は自分のことを、最初こそ「僕」と言っていたが、次第に「俺」と出始めた。
緊張がほぐれて、酔い始めた証拠だろう。
寿紀はこれからがチャンスだと感じた。
「冷酒飲める？」
「冷酒ですか、とりあえず大丈夫です！」
冷酒で一気に酔わす作戦だ。
冷酒を裕也のグラスに注いだ。
「希美からしたら草食系男子か(笑)希美は気が強いからな〜、厳しくやられちゃってない？悪気はないんだろうけどさ。」「いえ、丁寧に教えてもらってますよ。俺の出来が悪いんですよ。それよりか…」
「それよりか…、何だい？」
「綾瀬主任、美人なんで、同期の連中から俺羨ましがられてるんです！」
「なんだそりゃ？」
「お前だけズルい、俺らも経理行きたいって(笑)」
「へぇ、そうなんだ！でも肝心の裕也はどう思ってる？」
「そりゃあ、良いですよ！経理の仕事は別にして、出来れば綾瀬主任と一緒に仕事したいっすね。でも、ダメ男で他に飛ばされるかも(笑)」
「一回り年上のただのおばさんだろ(笑)」
「そんなことないですよ〜！綾瀬主任って米倉涼子似だし、年上女性は人気だから同期の連中みんな、綾瀬主任みたいな彼女が欲しいって。」
「米倉涼子か…少しそんな雰囲気あるかもね、希美モテるんだ！」
また冷酒を注ぎ足す。
「同期連中から、主任の写メくれとか、もうやったか？とか…あ、あ、いや…」
「ん！？やったか…？」
「あ〜ッ、すみません！！旦那さんの前で…つい口が滑って…」
「気にしないでいいから(笑)モテないよりかは良いかも。酒の席だから無礼講だよ！」
（よしよし♪）
裕也のほうから口火を切るとは、進展が想定以上に早いかもと寿紀は思った。