悠-5
「あの、大久保さん・・・でしたっけ?スミマセン。分からなくて」
少し困惑してそんな風に言えば
「いや。ごめん。俺の方こそ驚かせた」
なんて困った顔で笑いかけた。
「で。ナンパも良いんですが。
イタリアの方からの電話会議が始まります。
部に戻ってください」
笑いをこらえながら宇野さんが大久保さんを急かした。
「ごめん。また」
あ。っと電話会議の事を思い出したようで
出口に向かうところで、一歩足を踏み出して
また何かを思い出したように
私の方を振り返って、首から下げている社員証を手に持った。
「中野、美緒ちゃんね」
私の名前を読んで大久保さんはクスッと笑った。
そして顔を斜めに傾けて
私の耳元に顔を近づけると
「イタリア語でミオって『俺の』って意味なの知ってる?
君は、俺のだよ。覚えておいて」
そう言うと、「大久保さん早く!」と急かす宇野さんに着いて
食堂を出て行った。
なに・・・あれ・・・