悠-3
今さっき、茜の話題に上がった海外事業部の大久保さんが
私の目の前に来て、片手をスーツのズボンのポケットに入れ
もう片手で私の目の前のテーブルをノックしていた。
うん。確かに・・・カッコいい。
みつ・・・けた?
だれを?
「見つけた。久しぶり」
そういって極上の笑顔を私に向けた。
広い食堂は、シン・・と静まり返った。
え・・・なに?
訳が分からずに茜の方を向くと
コソッと小さい声で、
「いきなり、大久保さんがすごい勢いでこっちに歩いてきたから
食堂中が何事かと思ってみていたら、美緒の目の前に来て・・・」
と、視線を大久保さんに向けた。
「久しぶり」
もう一度、ゆっくりと綺麗な声で私に向かって繰り返すけど。
私は、大久保さんを初めて見た訳で。
久しぶりって、何?
それともここは、話を合わせるべき?
どうしたらいいの?
「あ・・・の」
私の言った言葉に大久保さんが少しだけ眉間にしわを寄せた。
「もしかして、俺の事分からない?」
はい。分かりません。
って、名前は今さっき、茜に聞いたけどね。
「―――そっか」