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プラネタリウム
【ラブコメ 官能小説】

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B-7

昨日、未央を追い出してから、湊はそのままベッドに潜り込んだ。
そこから眠ってしまったようだ。
翌日起きた時には、隣に自分の部屋着を身に纏った陽向が眠っていた。
気持ち良さそうに丸くなって自分の腕を握っている。
「…ひな」
随分すっきりした頭で問いかける。
陽向はスヤスヤ眠り、微動だにしない。
湊は腕をそのままにし、サイドテーブルの体温計を手に取った。
鳴るまでの間、陽向の頬をつまむ。
白い素肌が目に眩しい。
―――ピピピ
36.8℃。
大分良くなった。
湊は体温計を放置し、陽向から離れて毛布にくるまった。
目を覚ました陽向が背中に抱きつく。
「なんで…」
寝起きの声が聞こえる。
「なんで言ってくれなかったの…。連勤なんてウソじゃん…」
左肩を弱々しく叩かれる。
「…うっせーな」
湊は頭から毛布を被った。
その毛布を剥ぎ取られる。
「バカ!なんで隠すの?!…心配してんのにっ!」
陽向は泣きそうな顔をして湊を見た。
久しぶりに見た陽向の顔がそんな顔だなんて嫌だな……と、思う。
湊は、もう熱ないからいーかな…と思い、陽向をゆっくりと抱き締めて「悪い」と呟いた。
「なんで…」
「…あ?」
「なんで言ってくれなかったの?」
「なにが」
「具合悪いこと!なんで嘘ついたの……」
「お前、身体弱えーんだもん。うつしちゃいけねーと思って…。身体大事な仕事だろ」
「マスクすればへーきだもんっ…」
「でもね、もう治った」
「うそだ」
「なんでだよ。うそじゃねーよ」
湊はサイドテーブルに置きっ放しにした体温計を陽向に見せた。
陽向はたれ目を丸くし「ズルしてない?」と湊を見据えた。
「するかよ」
陽向は笑った湊に抱きつき「…よかった」と言った。
見上げた陽向のおでこにチュッとキスをする。
陽向はヒヒッと笑って湊のおでこに左手を当てた。
「ちょっと熱い」
「お前のせいで熱上がった」
湊はそう言い、陽向を抱き締めて一生分の温もりに浸った。

「うどん、作ったよ」
そう陽向の声が聞こえたのは午後5時を過ぎた頃だった。
湊は起き上がってリビングのソファーにだらりと腰を降ろした。
箸を手に取り、うどんをすする。
素朴な味がする。
「……」
「美味しい?」
「…んまい。つーか…ちょっと料理上手くなった?」
湊は陽向を見上げて言った。
「料理やってる人にそー言われると嬉しい」
陽向はニッコリ微笑んで湊を見た。
風邪を引いている時に見る陽向は、なんとなくオトナに見える。
「まだ顔が具合悪そーだよ」
「そ?」
湊はまた、うどんをすすってその味を噛み締めた。
「つーかさ」
「ん?」
「なんでうち来たの?」
連勤と言ってあったから来るはずないと思っていた。
「んー…会いたかったから」
陽向は恥ずかしそうに笑いながら、使い終えた鍋を流しに置いた。
「でも来てみたら、なんか具合悪そーだし、身体熱いし…びっくりした」
「はは」
「笑い事じゃないよっ。ホントに心配したんだから……湊が風邪引くなんて珍しいし」
「俺も自分がまさか風邪引くとは思わなかった。ちょー最強の肉体だと思ってたのに」
湊の言葉に陽向がケタケタ笑う。
「陽向」
「なーに?」
流しからジャージャーと水の音が聞こえる。
「こっち来てよ」
陽向は「食べ終わったの?」と言いながら水を止め、ソファーの側まで来た。
「まだ残ってるよ」
湊はその言葉を無視し、「あーんして」と無邪気に言った。
「あははっ!なにそれ。やだ」
「なんで」
「自分で食べれるでしょ」
陽向はそう言いつつ、湊が置いた箸を左手に取った。
丁寧に息を吹きかけてくれる。
「なんで今日はそんな甘えたなの?」と、笑いながら陽向は湊の口元にうどんを持っていった。
遠慮なくそれを口で受け取る。
いつもとは、立場がまるで逆だ。
湊はうどんを食べながら「もっと」と呟いて陽向の左腕を握った。
「ねー、まだ熱あるんじゃないの?」
「ねーよ」
「うそだ。こんなの湊じゃないよ」
陽向がケタケタ笑う。
「今日ぐらいいーじゃん…ひな坊…」
湊がそう言うと、陽向は湊のおでこに手を当てた。
「ほらー。やっぱり熱上がってる」
体温計を渡される。
そのまま大人しく目を閉じ、体温計が鳴るまで陽向の二の腕に触れる。
陽向が恋しくて仕方ない。
体調が悪くなると、こんなにも愛する人が恋しくなるものなのか…。
グッタリしながらしながら体温計の音でハッとなる。
湊は再び舞い戻って来た悪寒を悟られまいと毛布に顔をうずめた。
「えーっ…やっぱりまた熱上がってるじゃん」
陽向は体温計を手に取りブツブツ言いながら立ち上がった。
チラ見した体温計は38度台を計測していた。
「あー…ひな…待って…。帰んないで…」
「帰るわけないでしょっ!ほら、湊っ……ベッド行くよ」
陽向に支えられながら廊下に出てすぐ右にあるベッドルームに連れて行かれる。
視界がぼやんとしている。
そのままベッドに横になり、あーとかうーとかわけのわからない言葉を発している自分が恥ずかしい。
「ひなたー…」
「なーにー?」
「あたまいたい…。薬…引き出しにあるから…ちょーだい…」
半ばうわ言のように呟くと、陽向は言われた通りに薬を取り出し、自分の膝に湊の頭を乗せ、ゆっくりと薬を口に入れた。
ペットボトルの口を、自分の口に当ててくれる。
「飲める?」
「ん…」
湊はヒーヒー言いながら薬を飲み込んだ。
きっと、明日の朝には楽になっているだろう。
ブルブル震える身体に、たくさん布団をかけてくれる。
「1時間ぐらいすればきっと楽になるよ」
陽向の優しい言葉に、胸がキュンとなった。
こんな看護師、最高だな…と、思いながら湊は陽向の手を握って深い眠りに落ちた。


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