A-8
「んんっ!…あっ……はぁぁっ…」
湊にきつく抱き締められながら、陽向は何度も絶頂を迎えた。
息を整えるのに必死になる。
ゆったりとしたリズムになった時、湊は陽向に触れるだけのキスを落とした。
気付いたら、自分で腰を動かしていた。
目を閉じて、今度は自分からキスをする。
何度目か分からないそのキスと同時に、湊の動きが速くなっていく。
「…っあ…は」
「んんっ…んぅ…」
再び仰向けになり、湊が息をつきながら激しく腰を送る。
「あっ!ん…イきそ…」
「あぁっ!んぁっ!…はぁっ……あたしも…」
「んんぁ…イくっ……」
奥まで思い切り突かれ、陽向はまた絶頂を迎えた。
胸の辺りに温かいものが放たれる。
息が整わない。
そのまま睡魔にさらわれそうになる。
「はぁ…はぁ…ぁ…ぅ…」
「陽向?」
湊がティッシュで胸を拭いてくれている。
耳鳴りみたいな、ゴーゴーするような、変な音がする。
しばらくして、湊が隣に寝そべる。
「ふ…ぁ……あ!」
目元に冷たい物を押し当てられ、一気に目が覚める。
アイスノンだった。
「目、めちゃくちゃ腫れてる」
「見ないで」
アイスノンを目に押し当てて陽向は言った。
ひんやりしていて気持ちいい。
「やだ。顔見たい」
湊はアイスノンをゆっくり取って、陽向の冷えた瞼にキスをした。
ギュッと抱き締められ、頬を寄せ合う。
「ひなちゃん」
「なーにー」
「あのさ…」
「ん?」
「…いや。やっぱ何でもない」
「なにそれ…」
湊が何か言おうとしたのが気になるが、睡魔に襲われそれどころではなかった。
湊に抱き締められながら、陽向は泥沼のような眠りに落ちた。
目が覚めた時には12時を過ぎていた。
隣で湊も眠っている。
大きな手を握り、自分の顔に当てる。
「ん…ぁんだよ…」
湊は眠たそうな声でそう言うと、陽向を抱き枕のようにして抱き締めた。
「重いー…」
「ぅーん……」
寝起きの悪い湊は珍しい。
相当疲れているのだろう。
「ひな…た…」
なんだか湊が可愛らしくて、陽向はイヒヒッと笑った。
また、スースーと寝息が聞こえてくる。
このままもう一眠りしよう。
陽向は湊の腕の中で丸くなって目を閉じた。
再び目を覚ましたのは1時間後だった。
湊に蹴飛ばされて起きた。
「…った!ちょっと…もー」
「あ…わり。つーか、まじで身体痛いんですけどー!」
湊は起き上がって思い切り伸びをした。
少し伸びた髪の毛がボサボサでダサくて笑える。
陽向は毛布の中で大あくびをした。
すると、湊にゆっくりと抱き起こされた。
「おいしょ」
寝ぼけ眼で湊を見つめる。
「髪ボッサボサ」
「湊もすごいよ」
「うるせ」
湊はそう言った後、陽向を前から抱き締め、深呼吸した。
「毎日こーだったらいーのに」
「え?」
「起きたら隣にお前がいたらいーのに」
「そーだね…」
あたしだってそう思うよ。
毎日起きたら湊がいればいいのにって。
「帰りたくない」
「明日も仕事だろ?」
「うん。やだ」
「次の休みは?」
「木曜日。もう夜勤始まるから、休み不定期になっちゃう」
「俺も不定期。どっか休み合わせるか?」
「合わせたいけど、新人の分際で休み希望なんて出せないよ」
「それもそーだな」
湊はケラケラ笑うと、陽向の髪を撫でて「でも、たまにしか会えないと会った時めちゃくちゃ嬉しいよな」と言った。
「うん…」
「毎回泣くのかな、お前は」
「泣かないもん」
「あ、そだ。目ぇ直った?」
湊にじっと見つめられ、キュンとなる。
「直ってる?」
「いや、若干腫れてる。右目が一重。ははっ」
つられて陽向も笑う。
「幸せな休みだねー」
「そーですねー。って俺仕事ー。おし、コーヒー飲むか」
「飲みますか」
湊にポンポンと頭を叩かれる。
2人でベッドから下りてリビングに行く。
最高の休日だ。
夕方には別れを告げなければならないけど、また嫌な仕事が待っているけど、最高の休日が待っているから頑張れる。
陽向は湊が持ってきたコーヒーをすすり、明日からまた頑張ろう、と心の中で思った。