デート、開始-6
いい歳したオバさんが、勘違いファッションを指摘されたことに逆ギレして、下着姿で泣き喚くこの光景は、天童さん達の目にはどう映っただろう。
さも残念なものを見るような目で、私を見ているんだろうなってわかっているけど、それでも涙は止まらなかった。
いや、むしろ次々に込み上げてくる涙で嗚咽まで漏れてくる。
しゃくり上げながら泣いていると、やがてすぐそばでヒロさんの、ふう、というため息が聞こえてきた。
そして、次の瞬間に急に白み始めた視界と、いきなり香ってきたホワイトブーケの甘い匂い。
何かが私の頭上に降ってきた。
咄嗟に私の視界を遮ったものを手に取ると、そこにはさっきまで彼が腕に引っ掛けていた洋服が。
「…………?」
グスグス鼻をすすりながらまんじりとそれを眺めていれば、
「とりあえず逆ギレするのは、それを着てみてからにしてくれる?」
と、相変わらずの冷めた視線にどことなく笑っているような口元で、ヒロさんは私を見つめていた。
◇
違和感があるとそわそわ落ち着かなくなるのは、何故だろう。
今まで生きてきた中で、自分では決して選んだことのないデザインのワンピースを纏った私は、大きな鏡の前でぎこちなく前から後ろから、映る姿を眺めていた。
……なんか、地味じゃない?
今でこそダサいオバさんだけど、若い頃はそれなりにブイブイ言わせてた私は所謂「ギャル」に分類される人種で、ミニスカートは当たり前、胸元を大きく開けたり、露出度の高い服なんてお手の物だった。
ところが、今の私の服装ときたら。
アイボリーのシンプルなノースリーブのワンピースは、私のワンピースよりも若干丈が長くて膝が隠れるくらいの、胸元の開き具合が控えめな、よく言えば無難、悪く言えば面白味のないデザインだった。
これだったら、私が選んだワンピースの方がセクシーだし、デザイン的にもオシャレに見えるのに。
そんな私の頭の中を見透かしたように、ヒロさんが拳を口元にあてながら不敵に笑っていた。