デート、開始-4
お膳立てしてくれた天慈くんには申し訳ないけど、やっぱり私は背伸びなんてしない、身の丈にあったデートで充分だ。
お金をかけずに街を歩いたり、ドライブしたり。
それだって輝くんがいてくれたら充分楽しいに決まってる。
ようやくそう達観した私は、自分で選んだワンピースに脚を入れた。
するとその時。
「色仕掛けのつもりでそんな露出が多いワンピ選んだんでしょうけど、そんなの逆効果よ」
アイボリーの服を腕に掛けたまま、それを組んでいたヒロさんが、明らかに不満そうな顔でバックルームのドアにもたれていた。
そして、動きが止まった私に、ペタペタとスリッパを鳴らしながら近付いてくる。
いよいよ私の目の前に立ち塞がった彼は、
「何? 吾郎があなたを犯すとでも思った? その貧相な身体を」
と、バカにしたような視線をこちらに向けた。
「…………」
完璧な容姿のヒロさんにそう言われると、きまりが悪くなって、下着姿のまま立ち尽くしてしまう。
貧相な身体と言われて真っ先に目がいったのは、自分の胸元。
産後もそんなに太らなかったのは誉めてやりたいけど、スカスカの胸を見てると自然と恥ずかしさで顔が赤くなる。
元々が細身だった私は、胸も大きくない方だったけど、それでも授乳期のおっぱいはそれなりに大きかった。
でもそれは産後の一時に過ぎなくて。
生まれて初めてできた谷間に喜んでいたのも束の間、瑠璃の卒乳とともに萎んでしまったのだ。
いや、大きさだけで言ったら産前よりも小さくなった。
そんな私の悩みを見透かしたような、「貧相な身体」発言に、反論なんてできるわけもなく、ただ下唇を噛むしか出来なかった。