かけひき-1
陽一は意外な面を持っていた。次の日の昼休み、給食が終わってからしばらくして、アンジェリーナは陽一に呼ばれた。また体育器具室の裏に来た。給食室から遠くないところなので、給食のおばさんたちが片付けをしている音や、給食の残りのにおいがすぐ近くでした。
「これ見ろよ。」
と陽一は携帯電話をアンジェリーナに見せた。そして中の画像を開いた。
「さっき先生の上着から取ってきた。やっぱあいつ、黒だな。」
カラオケボックスらしい場所で先生とヴィーカとの写った画像がたくさんあり、ヴィーカはだんだん裸になっているのだった。どうやら先生は酔っているらしい。顔が変だった。ヴィーカは、服を無理に脱がされているようには見えず、明るい表情でカメラを向いておどけてさえいる。画像を見ていくうちに、アンジェリーナは先生が自分の消しゴムを手にとっているのを見つけ、思わず、なんで先生が持ってるのと大きな声を出した。
「ああ、あれ、ほんとは俺がお前の筆箱から盗ったんだ。それをあいつに見つかっちゃって・・・」
「あんた馬鹿じゃないの? その携帯返しなさいよ、ヴィーカがかわいそうじゃない。」
「あいつに言いつけるなよ。俺、いつかこの話を大人に言ってやろうと思ってるんだ。」
「あんたが盗んだこともばらすわよ。」
「俺がいまこれ誰かに見せたらあいつも終わりだな。」
「あんたも終わりだって言ってるのよ。ヴィーカのことも考えなさいよ。秀哉に言ってもだめよ。」
「じゃあ、返してやってもいいけど、俺が盗ったこと言うなよ。それから、もう一回、じゃなくて二回させろよ。証拠のお礼。」
「ヘンタイ。」
アンジェリーナはそう言って陽一からカメラをひったくると、自分から後ろを向いて前かがみになった。それでも、陽一の口をそこに感じた時には、やはり自分の方が上である気がするのだった。
アンジェリーナは午後の休み時間に先生のところへ行き、誰かの落し物ですと言って携帯電話を先生に渡した。先生は何か言おうとして口を開けたが、一度身を引いてから、僕のです、ありがとうとだけ言った。
それからアンジェリーナは陽一に告白された。お前のためならなんでもすると言われたアンジェリーナは、少し惹かれて、どうせしたいだけなんでしょと言ったが、断らなかった。