詐欺-3
とてもじゃないがデリヘルを呼ぶ気にもなれなくなっていた。
「う、嘘だろ…?一千万とか無理じゃん!はったりさ、はったり。バックレてりゃ問題ねーさ、きっと…」
竜彦は当然そんな大金を払える訳もなく、特に用意するつもりもなかった。不安を抱えながらも何もせずに1週間が過ぎた。
その日、授業を終えアパートに着く寸前に例の番号から電話が掛かってきた。無視する竜彦は携帯をポケットに入れアパートの階段の前に差し掛かる。すると道路に停まっていた黒塗りの車からいかつい、いかにもというような男が2人降りてきた。
「真田竜彦か?」
いきなりの呼び捨てだ。
「は、はい…」
「どうして電話に出ないんだ?」
無視する瞬間を見られていたみたいだ。何も言い訳が出来ない。
「で、金は用意できたのか?」
「い、いえ…」
恐怖で震え上がる竜彦。
「あなた達はあのサイトの人達ですか…?」
「あ?違うな。回収屋だ。依頼を受けて金を引き取りに来た。払えない場合は事務所に来て貰い支払いの手続きをしてもらう事になっている。で、払えないんだな?」
「は、はい…」
恐れおののく竜彦を男が取り押さえる。
「じゃあしょうがねぇ。事務所に来てもらうか。」
「え!?ち、ちょっと!」
物凄い力だ。完全に竜彦を取り押さえて車内に押し込んだ。黒塗りの車は急発進してあっという間に消えて行ってしまった。
車内で生きた心地のしない竜彦はずっと怯えていた。テレビドラマでの取り立てがまさか実際に自分の身に起きるとは思わなかった。最悪殺される事も想像し恐怖に震えていた。
(マジかよ…!ヤベーよ…)
額には冷や汗がびっしょりと浮いてきた。竜彦はどこを走っているのかも分からない程に混乱していた。