鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵 3.-11
「よ、陽太郎くんっ……、どうしよ……」
キスと喘ぎの合間に友梨乃は魘されるように陽太郎に縋った。
「ええよ、ユリさん。……気持ちよくなって」
「だって……」
声が出そうになってキスで防ごうと顔を近づけてきた友梨乃の唇を躱し、陽太郎は頬にキスをした。
「恥ずかしくない。……大丈夫」
「んぁっ……!」少しだけ中で陽太郎が指を曲げただけで、友梨乃はビクンッと体を震わせて一際大きな声を上げた。「……だ、だいじょうぶじゃないよ……」
「動いて……? 指、こうしといてあげるから。ユリさんが好きなようにしてええし」
「ああ……」
羞恥とも歓喜ともつかない溜息を漏らすと、友梨乃は片手で陽太郎のニットを握ってしがみつきながら、もう一方の手を後ろ手にベッドのシーツに置いた。陽太郎も差し入れていない方の手で友梨乃の背中を支える。友梨乃は足をベッドの下について、膝に力を込めて腰を前後に動かした。
「うあっ……、やっ……」
一往復しただけで、腰がわなないて蜜が奥から陽太郎の指に降りかかってしまったのが自分でも分かった。「やだ……、陽太郎くん……。見ないで……」
また潤んだ瞳で見上げると、半開きにした口を向けて陽太郎に催促した。
「んっ……」
陽太郎がキスをしてくる。ということは、今の自分のはしたない姿を見ているわけではない。友梨乃は後ろに付いた手と床を踏む足を突っ張り体を大胆に前後にゆすった。陽太郎の指が内部を擦る。
「ユリさん……、好きです。もっと見たいし、感じてほしい」
陽太郎の声が聞こえてくると、指に向かって体が溶け爛れてしまいそうなほど熱くなって、前後する幅が大きく早くなっていく。
「よ、陽太郎くんっ……」
キュロットスカートが汚れてしまうかもしれない。だがそんな危惧では腰を押しとどめることはできなかった。「……一緒にいてね? ……私と。……一緒にいてっ」
「いるよ。……離さへん」
背中を支える手がぎゅっと友梨乃をバニラの香りの中に引き込んできた。
「……ごめんね。私……。陽太郎くん、に、……こんなことさせて……」
友梨乃の乱れる体を慈しみで支えていた陽太郎だったが、友梨乃の言葉に沈鬱が射し込んだ。友梨乃は今、女としての自分に身を預け、欲情を迸らせているに過ぎない。陽太郎は必死にその思いが全身を飲み込んでこないように抗った。どっちでもいいんだ。一緒にいてと言ってくれているのだから。
「う、く、……あっ、よ、陽太郎くんっ……!!」
やおら友梨乃がしがみついてきて身を丸めた。友梨乃の内部が指を締め付けながら艶かしい動きで奥へ引きこむ。友梨乃の体がビクッ、ビクッと何度も痙攣した。
「すき……」
小さく囁かれた。はじめて聞いた。
同時に下腹部を擽られて、陽太郎の体もビクンッと跳ねた。ニットスカートはめくれ上がって、その下のブリーフの腰から男茎が頭を出していた。朦朧となりながら抱きついてきた拍子に、愛する恋人の太ももの肌がそこを擦ってきたのだ。自分を好きだという言葉とともに。
「う、あ……、ユ、ユリさんっ……」
慌てて抱きつてきている友梨乃を脇に引き剥がした。絶頂の余韻の中で友梨乃は急に身を起こされて驚いて目を開いた。その目の前には、ミニワンピースの裾から男茎が飛び出していた。始めそれが何かわからなかった。ディルドとは色も質感も異なっている陽太郎の男茎は、友梨乃好みの女の体からまるで別の生き物のように突き出していた。
「ヤ、ヤバ……」
呻いた陽太郎が男茎の先端を握って、身を捩ってティッシュの箱を探したが、普段ベッドの近くに置いているはずなのに手の届かない離れた場所にあった。「う、あっ……!」
陽太郎が声を上げると握った指の中の男茎を根元から何かがせり上がってきて傘が開くのが見えた。
「あっ……、やっ……!」
飛んでくる予感に友梨乃は思わず身を引いて体の前に両手を広げた。その瞬間、男茎の先端から精液が激しく噴き上がり、覆い包んだ手では防ぎきれず指の間から飛沫が飛び散った。何度も脈動を続けながら、友梨乃の痴態に刺激され続けた劣情が爆発する。
「わ……」
友梨乃の手のひらにも白い粘液が飛んできて付着し、その感触に友梨乃は呻いた。手のひらに陽太郎の噴射を浴びた瞬間、絶頂の心地よい浮遊感が失せていった。
「……、……ご、ごめん……」
全てを吐き出した陽太郎が息を切らして言うと、友梨乃は恐る恐る目を開けた。指の間の粘液が滑る感触を確かめると、そこには白い雫が指と指とを繋ぎ、あるいは小指の先から垂れ落ちて揺れていた。
「う……、あ……」
嗅いだことのないニオイが友梨乃の鼻腔に差した。脈拍が早まる。目の前の女が股間から放出したものは、男が情欲の果てに吐き出す証で、聞き知ってはいても友梨乃が生まれて初めてまみえるものだった。
「……ユ、ユリさん……」
「う……、あ、あの……」