瀬奈の真実-6
「おはよっす…」
翌朝海斗は人目を避けるように出社してきた。いつもと違うテンション低めの声だけでも周りを振り返らせる力を持っている事に気づいていなかった海斗に一番始めに視線を送って来たのは幸代だった。海斗はすぐさま視線を外した。
「お、おい、どうしたんだよ!?」
まずは部長の安田が心配して寄って来た。顔に傷が残り腕に包帯を巻いている。誰が見ても心配する格好だが隠しようがなかった。
「い、いや…よ、夜釣りに行ったら岩場から落っこっちゃって…」
「夜釣り??それ、岩場から落ちた怪我か??」
傷というよりも打ち身の目立つ体を見て安田が言った。
「まぁ気にしないで下さいよ。仕事には影響ないんで。」
「そうか…。あ!」
何かを思いついたような顔をした安田は馬鹿げた事を口にする。
「おまえまさか田崎を無理矢理ホテルに誘おうとして反撃されたか!?」
ビクッとする幸代。
「ち、違いますよ…!!」
幸代が立ち上がり言った。訳の分からない事を口にした安田にイラッとした海斗。
「馬鹿かハゲ!!」
吐き捨てるようにして机に向かった。
「じ、冗談なのに…、ハゲは酷いよ…」
安田はトボトボと椅子に座った。
幸代は心配で心配で仕方なかった。昨夜の事が気にもなって仕方ない。一体昨日の女性は誰なのか、どうして海斗の家にいるのかはっきりと聞きたかった。幸代は海斗をチラチラ見ながら午前中は仕事が手につかなかった。
昼休みは早めに海斗は上がっていった。幸代は一段落ついてからお昼に上がる。食堂に入るとそこには海斗がいた。
「やだぁ、ザックリ切れてるじゃないですかぁ!ちゃんと消毒して包帯換えないと!」
知香が海斗を手当てしていた。
「超痛いんだよ〜、知香ちゃ〜ん。」
「もう、大人なんだから我慢するのっ!」
知香にデレデレしながら手当てしている海斗を見た瞬間、ドアを締め車で昼休みを取ることにした。
「な、何なのよ…デレデレしちゃって!あんな女ったらしだと思わなかったわ!心配して損した!」
思い切りジェラシーを感じてしまった。
「知香ちゃんも知香ちゃんよ!甘やかし過ぎ!」
ずっと苛々していた幸代だった。