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THE 変人
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瀬奈の真実-5

 「電車を乗り継いで記憶を辿り、ようやくあの海に辿り着いた。あの台風で小さい頃の記憶の中の素敵な海とは全然景色が違かったけど、今の私の境遇を考えるとピッタリだと思った。崖の上に立つと凄い風と雨、荒れ狂う海が怖かった。でもふと思ったの。あの海の中に飛び込めば、きっと竜宮城に行けるって。何の不安も心配もなく、幸せに一生生きて行けるかもしれないって。私の人生をリセットしてくれるんだって。そう考えたら全然怖くなかった。きっと私は笑顔を浮かべて崖から飛び降りたと思う。宙に浮いてる間、不思議な感覚だった。柔らかな雲に守られて空を飛んでるような…。とても穏やかだった。もう私は悩む事なんてない、だって今から竜宮城に行くんだもん…。そう思ってた。そして気がついたらあなたの顔が見えた…。」
顔を上げて海斗に微笑んだ瀬奈。
 「そんな事があったのか…。悪かったな、竜宮城じゃなくてオッサンの顔を見させちゃってな。」
 「ううん?私は竜宮城に来たのよ。」
 「はっ?どうゆう事??」
瀬奈はニッコリと笑った。
 「海斗のこの家に着いた時、あまりの豪邸にビックリしたでしょ、私。きっと竜宮城に着けたなら同じようにビックリしたと思うの。だから私にとって竜宮城はここ。ううん?海斗こそが私にとっての竜宮城だったんだって思うの。海斗の優しさこそ私が求めてたもの。そう信じてるの。」
 「ハハハ、そうか。ようこそ竜宮城って感じたな!じゃあようやく竜宮城に来たんだ。これからずっと安らかに暮らせよな?」
 「うん。ありがとう。」
抱きしめ合う2人だが、お互い竜宮城に来た浦島太郎はやがて元の世界に戻るというストリーは知っていたのであった。
 (この子を立ち直らせてやりたい…。)
海斗は切にそう思った。しかしそれがいかに難解で大変な事だと言う事も感じていた。しかしその信念だけは常に忘れない…、そう決意したのであった。
 「海斗…、私を助けて…?」
真剣な眼差しで見つめる瀬奈。
 「ああ。可愛い可愛い人魚様を幸せにしてやるぜ!だから脱走すんなよ?」
瀬奈は屈託のない美しい笑顔で答えた。
 「うん。」
と。
 どうにかなるさ…、そんな心構えではなかった。険しい道のりは包丁で切りつけられた左手を見れば容易に想像できた。正直どうしていいか全く分からない。しかしあの日、瀬奈を釣り上げた事が運命なら瀬奈を救う事も運命なんだと、そう思った海斗だった。


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