瀬奈の真実-4
「浮気を止める様子はなかったし、もうあの女を忘れるには有樹と別れるしかないと思った。悩みに悩んで両親に打ち明けたの。そうしたら彼に限って浮気なんてする訳ないだろう、きっと思い過ごしだって言われて離婚を反対された。でもその裏には浮気ぐらい我慢しろみたいな本当の気持ちも見えたの。だって議員の娘が浮気を理由に離婚なんてしたらいい笑い物だもんね。議員の立場の父の気持ちは良く分かる。私だっていい子でいたい。父の仕事の足なんて引っ張りたくない。父の言う通り浮気ぐらい我慢しようかとも思ってもう少し頑張る事にした。でも頭はおかしくなりそうな毎日。そんな毎日を過ごし、何度もあの香水の匂いを嗅ぐ度に私は壊れていった。昼間一人でいる時、気が狂いそうな自分が抑えきれなくなって、気づいたら部屋中がグチャグチャになってた。もう何もかもが嫌になっちゃってそのままボーッとしていたらやがて有樹が帰って来た。またあの香水の匂いをプンプンさせてね。もう私は訳が分からなくなってね…、心の中の糸がプッツンと切れた。私は有樹に襲いかかってた。もともと性格は優しく穏やかだから私に殴り返す事もなく耐えてた。私が落ち着くと謝り、もう浮気はしないと言って宥めてくれた。でも次の日にはまたあの香水が。そして錯乱する私…。そんな毎日だったの。」
瀬奈は理解してもらうもらわないを気にする様子もなく、事実を口にしていた。
「そんな毎日が続いて、錯乱して反省…、それを繰り返すうちに鬱病みたくなってきちゃって、もうダメだと思いまた両親に相談しに行った。でも答えは同じ。父には嫌われたくない有樹は父の前では円満を強調して私の異変には一切触れなかった。そしてある日、出かけると言われて連れて行かれたのが精神病院。悲しかった。私の苦しみを自分で解決しようとせずに他人に丸投げ。結局診断しても原因は分からずに1週間入院して様子を見る事になった。その間、有樹が会いに来る事はなかった。電話やメールだけ。きっとあの女と会ってるんだと思うとまた頭がおかしくなりそうだったけど、あの忌々しい香水の匂いを嗅がなくていいだけましだった。病院は落ち着いたわ。冷静に色々と考えられた。でも退院して家に帰るとまた同じ事の繰り返し。私は何度かリストカットをしたの。死のうと思った。リストカットする度に病院に入院してね。もう病院もお手上げだった。迷惑がってるのが分かった。その時に私は思ったの。私の居場所はとこにもないって。その時に決心したの。小さい頃に旅行で行って物凄く景色が綺麗で今でも忘れる事が出来ないあの海に身を投げようって。次の日、私は病院を勝手に抜け出してた。」
「…」
海斗にはかける言葉が見当たらなかった。