正夢〜希望〜-6
『珊瑚!!お前、俺のこと…』
「ん?どうしたの渉君」
『俺のこと…名前で…』
渉君の手をとる。その掌にはいくつもマメが出来て、いつもの渉君の手じゃなくて…。
「渉君…ありがとう」
『な、なんだよいきなり』
照れる渉君が、凄く愛しくて…。
私は渉君に優しく抱きついた。
周りの声も気にならない。
『おい、珊瑚…』
「渉君がんばったもん…。私からはこれくらいしか出来ないけど…」
『珊瑚…』
みんなの歓声と、体育教師が鳴らすホイッスルの音を聞きながら、私たちはずっと抱き合っていた。
私は前に見た夢に感謝した。
渉君のことを疑ってしまったけど、何回も泣きそうになったけど、私たちはもっともっと深く繋がることが出来た。
ありがとう、正夢になってくれて。
穏やかな春の日差しは終わりを向かえ、焼けつくような夏の日差しが夏の始まりを予感させる。
また、いい夢見られるかな…。
降り注ぐ日差しの下で、私はそう思っていた。