正夢〜希望〜-4
あの日から数日がたってもが、私は高山君に聞けずにいた。
なぜ、あの時二人の前に出ていかなかったのだろう…。
なんで、高山君に聞けないんだろう…。
気の弱い自分を恨めしく思った。
学校では出来るだけ平気なフリをしても、高山君をみる度に胸が痛くなった。
「ねぇ、翔…」
『ん?』
ある日の放課後、練習に行く翔を引き止めて、私はあの日のことを話した。
『なんだ…あれか…言ってなかったのかアイツ』
「…っ!何がおかしいの!」
『いや、そういう訳じゃねえよ。そうだなぁ…。珊瑚、全てを知りたいか?』
龍矢の真面目な顔に私も頷く。
『見てもショックを受けんじゃねえぞ』
翔の言葉を聞いても私の気持ちは変わらなかった。
学校を出て翔に着いて行くと、この前のゲームセンターに着いた。
『行くぞ』
翔の短い一言が私の緊張を増幅させる。
一階のどこを見渡しても、高山君の姿は見えなかった。
『なにやってんだ。こっちだ』
翔はそのまま階段を上っていった。
私は二階には行ったことがないが、たしかこの先は…。
カキン!!
二階はバッティングセンターになっていた。
《もっと腰を入れて!》
エコーがかった声が奥の方から聞こえる。
目を向けると、そこには熱心に指導するあの女の子と、バットを振る高山君がいた。
『アイツ、スポーツは大体出来るんだけど野球とかソフトは奇跡的にヘタクソでさ…』
翔がおかしそうに話し始める。
『本当はお前にアイツのかっこ悪いとこ見せようとしたのに、渉の奴なんて言ったと思う?』
「なんて言ったの?」
翔はククッと声を殺して笑うと、口を開いた。
『珊瑚にかっこいいとこ見せたいんだ。だから俺にソフトを教えてくれ!だってよ』
「高山君が…」
『野球部とかソフト部の奴に片っ端から頭下げて頼み込んでさ。んで、今教えてもらってるというわけ』
知らなかった…。高山君が私のために…。
『愛されてんなぁ、珊瑚』
「うん…」
『もうちっと信じてやれ。あいつはお前を裏切ったりはしない』
「うん…」
私は高山君の姿を見た後、家に戻った。