波立ち始まる海原-7
結局一日幸代は不機嫌なまま会社に帰り、そして一日の仕事を終えた。幸代の未だかつてないピリピリした雰囲気を避けるようにして事務所を後にした海斗。そんな海斗の背中をチラッと見た幸代はふと思った。
(良く考えたら海斗さんが私に当たられる理由なんてないのにな。何か悪い事しちゃったな…。)
海斗と自分は会社の上司と部下である。付き合ってもなければ友達でもない。海斗が巨乳が好きだろうが他の女に視線を送ろうが自分が責める資格は全くないのだ。自分が勝手に海斗を男として見て、勝手に盛り上がっていた事を反省する。
「謝らなくちゃ…」
幸代はスマホを握る。しかし電話で話すと絶対にちゃらけ始まる海斗を知っている。そうなると本当に言いたい事を結局言えないまま終わってしまうのはいつもの事だ。明日でもと思ったが今日謝りたい気持ちでいっぱいだった。幸代は社員名簿をバッグに締まった。
30分ほど残業した後に事務所を出る幸代は車に乗り社員名簿を広げて海斗の住所をナビに登録した。
「ここから1時間くらいか…。ちょっとだけでも行って謝ろう。」
事前に電話をすると別にいいと言われそうなのでアポなしで行く事にした。
いよいよ海斗、幸代、瀬奈の人生が一つに交わる瞬間が訪れる。瀬奈と出会ったあの荒波のような海原を3人は歩んで行く事になるのであった。