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兄弟に捧ぐ
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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兄弟に捧ぐ-1

新幹線の車窓からはこの国の半分の風景が次々と流れ去って行った。
私は指定されたこのシートに座って、それらをただ見送っている。
トンネルに入るとその景色は途絶え、目の前は真っ暗な継ぎ目が通り過ぎるばかり・・・
私はそういったものを実際に見た事はないけれど、昔の映画では時々こんな風にフィルムの繋ぎ目があったという。

「ママ、熊本にはいつ着くの?」

「もうちょっと・・・ほら見て、もうすぐ海の下を通って九州に着くのよ。」

東京から博多までは5時間と少し。私には近いように思うけど、5歳になる司には途方もなく遠いのだろう。
「司」と書いて「おさむ」と読む。これは熊本の義父がつけた名前でこの事を機に家出して東京で暮らす夫と熊本のお義父さんは和解した。
なんでも夫の生家は九州で土地を治めた名氏なのだそうで長男にはこうした長たる者にふさわしい名前をつける習慣がある。
そういう事だから私も不服を言えないけど、どうせなら読んで字の通り「つかさ」の方がよかったと思う。
今日はその義父の三回忌で私達は夫の実家がある熊本に向かっていた。
夫たちはこんなゆったりとした旅でないにしても、毎日電車で通勤している。
主婦にはあまりその電車に乗る機会がないから、日本の半分をわずか半日で通り過ぎる列車の旅が新鮮だった。

ちなみに次男坊の夫は利夫という平凡な名前をつけられていた。

「よう来なした。司はまた大きゅうなって・・・」

司の頭を撫でて迎えてくれたのは由利子さんといって、義兄の奥さんだった。
たしか、私より三歳年上で34のはずだった。
義父母はもうすでに他界して、今は義兄の貴仁夫婦がこの家に住んでいる。
他の親戚たちも駆けつけて私は知らない身内の中で見覚えのあるこの人の笑顔にほっとする。
義姉は紋付の着物姿で私よりはもっと年上に見える。

老けてみえるというより、和服姿が色っぽい…
しばらくして、私はそれに気がついた事だが、その肩には染め抜きの下がり藤が描かれていた。

義父の葬儀に来た時に夫の実家の家紋を初めてみたのだけど、それとは違っている。
男は家紋をあしらい、女はお寺の紋を着けるそうだ。
そうした、よく分からないような古い習慣が今でもここには受け継がれていて、それが私のすぐ身近にあるというのは不思議な気持ちになる。

義兄と夫とはふたり兄弟だったが案外仲がいい。
だけど、この義兄とも義姉とも司が生まれるまで私は会った事もなかった。
入籍した時に祝い金を送ってくれたのだが、どんな人なのかそれさえ知らなかった。

元より、兄弟は仲良かったと夫はいうがその言い分によると嫡男と次男とではずいぶん扱いが違ったという。

義父が亡くなる少し前にも私たちは一度ここを訪れていた。
司がちょうど二歳を迎える少し前で何の用かといえば、義兄夫婦には子供がいなかった。
つまり、司を物心つく前に跡取りに欲しいという事だった。
むろん、私たちはこれに応じられなかった。
結局この件はもう大きくなる事もなく口約束で、もしも義兄に不幸があった場合でなおかつ、それでも子供がいなければ私たちがここに移り住んで司を後継者にするという事で収まった。
強く要望したのは義父でその義父も三年前に亡くなった今は夫と義兄もしがらみなく仲良くしている。




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