鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵 2.-8
下腹部に圧迫感を感じながら、もう一度その言葉を拒絶した。最近抱かれる度に必ず言われる。すると智恵は一旦脚の間から抜け出し、顔を背けた友梨乃の脳天を掴んで自分の方へ無理やり向け、足の裏を首のそばについて跨ってきた。もともとストレートの黒髪だったのを智恵が好きだというので明るい髪色に染めてボブにまで切ったのだった。その髪を掴まれて涙目に潤んだ顔を覗きこまれ、腰を突き出してくる。革のショーツを履いた智恵の体の中心から、反ったディルドが友梨乃の眼前に突き出されている。
「ニセモノやん。……ニセモノのチンコで犯されて悦んぶんやから」
片脚を踏ん張って開いた股間の先から屹立する張形の先端を友梨乃の口に擦りつけてくる。「舐めて」
「やだっ……」
唇をつぐんで顔をしかめて背けようとする友梨乃の口に、腰を使ってシリコンの表面をこすりつけてくる。
「ほらっ、早よっ!」
グイッと擦りつけられると、んぬっと呻いて口を開いた友梨乃の口内に大きく開いた傘の模型が差し込まれていく。
「んぐっ……、ぬ……、んっ、お……」
智恵が腰を動かす度にくぐもった声を上げる友梨乃の唾液にディルドが浸されていく。
「ほら、ニセモノのチンコしゃぶりながらめっちゃ濡らしてるよ? ユリ」
咥える頬の内側を擦ってディルドが圧迫されると、智恵に埋められた反対側にも伝わり、内壁を擦られて上気した嘲りの表情を頭上から降らせながら、智恵は膝を掴んで大きく開かせると、友梨乃のショーツの両側から漏れた雫が照明に光った。
「んっ、ほら、ユリ。してほしい?」
ショーツを捩ってクレバスに押し込むように食い込ませて強く弄られると、
「んーっ、……おっ……」
友梨乃はディルドを含みながら首を振った。内部をかき回されて、智恵が腰をびくんとつき出すと、更に友梨乃の口内深くまで亀頭が差し込まれる。
「ほら、『いれて』って言うてみ?」
友梨乃の悲態と、ディルドから伝わる疼きに、智恵は更に好戦的にショーツへ指を突き立ててくる。
「あうっ!」友梨乃は身をのけぞらせて、先端から唾液の小さな雫を飛ばしてディルドを口から出し、「……智恵っ、い、いれてっ!」
と叫んでいた。
「……あやまって?」
「ごめん……。ごめん、なさい、……智恵」
智恵にどれだけ攻め立てられ、悲嘆に暮れても、智恵の手によって体を犯される甘美さからは逃れがたかった。口内をかき回された張形で、蜜が溢れかえっている脚の間を同じようにかき回してほしい欲求を抑えることができない。
含み笑いをしながら智恵が脚を下ろすと、膝を立てて開かせた間に再び座ってきた。ショーツが強く引かれて、亀頭が入り口に押し当てられてくる。
「……ヨーちゃんのチンコは挿れれんかったくせに、コッチは欲しいんやろ?」
徐々に圧迫を強めて亀頭を押し入れていきながら、顔を覗き込んで、「ニセモンのほうがいいなんて、ニセモンの女やん?」
「ううっ……、ち、ちがうっ」
「処女膜もニセモンのチンコで破られた女やのに」
「……うあっ!」
友梨乃は枕を掴んで、ディルドが体を開いてくる痛烈な性感に、情欲を露呈しないように必死に耐えた。
「悔しかったら、ホンモンとしてみ? ……って言われて、でけんかったんやったな。ほんま笑かす」
「やだっ……、智恵っ……。もう言わないで」
「だって、ユリいじめるん好きなんやもん。いじめるとめっちゃ興奮すんねん」
ディルドはもうその傘を全て友梨乃の中に埋め挿れられていた。
「智恵ぇ……」
甘く泣き濡れた声が絞り出ると、智恵は一気に奥までディルドを進めた。最奥に当たった反動で、革下着の中で智恵の側の先端も強く押し入ってくる。
「……んっ、ほんまモンのチンコは、もっと、もっと、ええよ。……私は、知ってるで? 彼氏ともいっぱいしてる、から」
腰を揺すって息を切らせながら智恵が言う。
(……ニセモノじゃない……)
初めて貫かれた時は、激痛しかなかったのに、今は挿れられることで恐ろしくなるほど快楽が弾けていく。友梨乃は絶頂へ駆け上がりつつ、心の中で何度も叫んだ。
本物の女になりたい。
社員は交代で休暇を取る。友梨乃はこの日休みだった。特に何もすることはなく、部屋の掃除と洗濯をしたが、それもすぐに終わってしまった。
陽太郎はバイトを辞めてしまうと思っていた。だが次の出勤日も陽太郎は友梨乃の目の前に現れた。
「よろしくお願いします」
「……よろしく」
しかし少しよそよそしくなった。やはり軽蔑しているのだ、と友梨乃は思った。
これまで指導してきたアルバイトよりも早く、陽太郎はフロアキーパーの業務を習得し終えて、カウンター業務にも携わるようになった。物覚えがいいのだろう、もう随分前に品川の研修で教わったはずなのに、エスプレッソマシーンの使い方も憶えていた。