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鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵
【フェチ/マニア 官能小説】

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鎖に繋いだ錠前、それを外す鍵 1.-5

 陽太郎は笑いながら、少し話し方が崩れてきてしまったが、智恵も気にしていないようだしいいか、と思った。それから智恵と東大阪市のかなりローカルな話題で盛り上がった。小中学校の話、中央大通沿いはもちろん、街路に入った所にある個人経営のものも含む店の話、東大阪でまことしやかに囁かれる噂……、等など。盛り上がりながらビールを何杯も空けていった。
「……まあ、大阪の女は全員ヤンキーでロストバージンするからね!」
「ムチャクチャ言わんといてください。四方木さんが聞いたら大阪どんな街やと……」
 と自分で言って、完全に友梨乃をほったらかしだったことに気づいた。もう長い時間言葉を発していない。「……あ、すみません。何かローカルネタで盛り上がってしもて……」
「あ……、大丈夫です。何て言うか、話すのが早すぎて、聞き取るのが精一杯……」
 しかも最初に頼んだカシスオレンジをまだ飲んでいる。
「ていうか、何でユリ、敬語なん? 藤井くんに」
 アルコールがかなり入ってきて上機嫌の智恵が友梨乃にジョッキを突き出して言った。
「いや、別に……」
「ええやん、年下なんやし、タメ口で。なぁ?」
 智恵が陽太郎に同意を促した。
「はい、そうしてください」
「……わかりました」
「言うてるそばから何で敬語やねーん! ……なに? ユリ、藤井くんにツッコんでほしかったん?」
 智恵が友梨乃をからかうと、酔っ払った智恵に困った微笑を浮かべた。
「そういうわけじゃなく……」
「ほんじゃ、ユリも、店以外やったら藤井くんにユリって呼ばれてもええやんな? そしたらタメ口で話やすいやろ?」
 と言って、陽太郎の方を見て、「ほら、ヨーちゃん、何かユリにしゃべってみ?」
「ヨーちゃんになったんすか、俺? しかもなんなんすか、その雑なフリ」
「えーから、行け」
 陽太郎は笑いながら友梨乃の方を向いた。
「えっと、ユリさんて、俺より歳上なんですよね。すんません、失礼ですけど、おいくつですか?」
「……今年、にじゅう、いち、……」
「『です』言うたらあかんで!」
 言葉を繋ごうとした友梨乃にすかさず智恵が言った。わかってるよ、と友梨乃が小声で言う。
「俺は今年19です」
 居酒屋の店員に聞かれてはまずいから、陽太郎は極力小さな声で言った。
「あ、そうなんで……、そ、そうなんだ」
 話しにくそうだ。だが、研修の時や今日初めて会った時の態度とは違って、困ったような、恥しがってるような表情だった。
(なんやこれ、めっちゃカワイイな。このヒト)
 もともとタイプの顔立ちだということもあり、陽太郎は最初ムカつかされた友梨乃への印象を改めていた。友梨乃は氷が殆ど溶けてしまったカシスオレンジのグラスから垂れる水滴がテーブルに落ちているのを、わけもなくおしぼりで拭き取りながら、時折智恵の方を見ていた。隣に座っている陽太郎の方は向いてこない。
「……、おいっ、話終っとるやん! ユリ」
「だって……」
「あかん。ほんじゃ、ユリからヨーちゃんに何か聞いてみ?」
「えっ……」
「あ、何でも聞いてください」
 陽太郎は体を向けて友梨乃の言葉を待った。友梨乃は眉を顰めて、少し考えたあと、
「か、彼女、……とか、いる?」
 と言った。
「おっ! やるな、ユリ。えぇ質問や!」
「います。大阪ですけど」
「……そうなんだ。いくつ、彼女」
「18ですね。高校の時の後輩です」
「そ、そう。えっと、大変だね。遠距離、恋愛……」
「まぁ、そうですね。お互い金ないんで、あんまり会えないっすね」
「……」
 友梨乃は限界を迎えたようだった。眉間を寄せたまま、話題を必死に考えているようだ。その表情や仕草も陽太郎から見ると歳上なのに可愛らしく映った。
「……、……智恵さん」
「んー?」
「……固まりましたけど、ユリさん」
「せやな。なんでや知らんけど、日本語もカタコトやったしな。ちょ、何なん? ユリ、そのブリッ子。いつもよりもヒドない?」
「ブリッ子なんすか? ユリさんて」
 陽太郎は笑いながら智恵の方を見た。確かにこの態度が計算ならば、ブリッ子というよりかなりの魔性だ。
「そんなブリッ子なんて、してないよ、私」
 友梨乃は少し自嘲の笑いを漏らしながら智恵に反駁した。
「無意識にそーいう感じ出しとるんやったら、もー、それは男タラシ」
「何でよ……」
 その時浮かべた友梨乃の表情を、陽太郎は智恵の方を向いていたから見逃していた。
「っていうか、彼女いる、って言われたらあるやろー、いろいろ聞くこと。どっちから告白したのーとか、どこまでヤッてんのーとか……。どこのラブホでヤッてんのーとか、一日何発ヤッてんのーとか、どんな体位でヤッてんのーとか」
 陽太郎は笑って、
「何か、結構最初のほうからヤッてんのーばっかになりましたけど?」
 と言った。
「ビール? 別のにする?」
 智恵はほぼ同時に空いた陽太郎のジョッキを見て、「私、ジントニ」
 陽太郎は手を上げて店員を呼んだ。友梨乃のグラスに残った液体は、氷が溶けて上澄みとなったグラデーションにオレンジ色が沈殿している。
「あ、ユリさんも何か頼みますか?」


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