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nightmare
【レイプ 官能小説】

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暗雲-2

 息子との待ち合わせのはずの場所にいた少年たち―――彼らはいったい何者なのか。妻との接し方をみるかぎり、少なくとも彼女の顔見知りではないようだった。
 こちらに背を向けて、少年たちと対峙しているため、秋穂の表情などをうかがい知ることはできない。女性にしては長身の彼女でも、彼らの間に入れば、それが目立たなくなる。それが私の不安をさらに高めた。
 少年たちは決してがっちりとした体つきをしているわけではない。だが秋穂よりは皆骨太で、本来なら美点である女性らしいなだらかな肩のラインがその脆弱さを際立たせた。
 そもそも正樹はどこに行ったのか。集まりの中に彼の姿はない。
 確か友達が一緒だと言っていた。だが、それにしては目の前の少年たちは年上すぎるような気がした。
 妻は少年たちとなにか話しているようだった。遠くて会話の内容は聞き取れないが、今のところ、それは穏やかにおこなわれている。
 先ほどは言い争うような声を聞いたような気がしたが、それは私の思いすごしのようだった。一団は和やかな雰囲気で談笑しているといった感じで、別段秋穂とのあいだにトラブルを抱えているようすもない。
 私は握っていた石ころを音がしないように置いた。
 ようすがおかしい。
 そう感じたのはしばらく経ってからだった。
 妻も少年たちも正樹を待っていることはわかった。彼らは全員人待ち顔で、秋穂にいたっては何度も手首にはめた時計を気にしていた。
 しかし、息子はどれだけ待っても姿を現さなかった。仮に彼らが正樹と知り合いで、彼の到着をいっしょに待っているとして、母親がこれだけつきあう必要があるのだろうか。私の疑念を裏付けるように秋穂は時間が経っても、彼らと打ち解けたふうもなく、よそよそしい態度をくずさなかった。
 現に主に話しかけているのは少年たちで、会話の輪の中に秋穂は参加しているようすはなかった。それでもなにか身振り手振りで伝える少年に対して短くうなづきを返していた。
 正樹が来るのが遅れる。といった内容ではないだろうか。妻は少年たちの話を最後まで聞いていないようすだったが、渋々といった感じでその場にとどまりつづけた。
 と、ひとりの携帯が鳴った。少年は秋穂のほうに一言断りを入れると、集団を離れた。妻はそのようすを目で追っていたが、相手が正樹ではないことを察したのか、それ以上関心を示すこともなく、あらぬ方向へと視線を向けた。
 写真で見るより、ずっと上玉だ。少年が私のほうに向かって、しゃべりかけてきた。
 私は階段の影に身を伏せていた。少年の視界には入っていないはずだった。
 それにすげー良いにおいがする。その口もとに少年らしからぬ下卑た笑みが浮かんだ。
 少年はあたりを行ったり来たりを繰り返した。そのため語尾がかすれ、言葉の端々をはっきりととらえることができなかった。自然、会話の中身は不明瞭なものになった。
 それでも「現役の女教師」「人妻」「AVみたいに」といった不穏当な響きを遠ざけることはできなかった。どれも妻に向けて使われているのはあきらかで、他の少年たちの彼女をみる目つきも気になった。
 急かすような電子音が流れた。それは少年たちのものではなく秋穂自身のもののようだった。
 アラーム音はおそらく時間を知らせるものだったのだろう。秋穂はそれを機に少年たちになにかを告げると、こちら側へ戻ってきた。
 潮時ということだろう。彼女の決断を少年たちは呆然として見送っていた。
 私はその段にいたって、まずい状況に気づいた。少年たちとのやりとりに気を取られて、自分の立場を忘れていた。このままでは彼女にみつかる。思わず後じさりしていた。
 足をとられ、よろめいていた。階段が急なのをすっかり失念していた。
 転倒をこらえようとして一瞬目を離し、再び視界を戻したとき、事態は一変していた。
 少年たちが互いに目線を交わし、こちらに向かって殺到してきていた。正確にいうと、妻の秋穂のほうへ。
 暗闇からにゅっと伸びた手が彼女の口を覆ったとき、私にはなにが起きたのか、わからなかった。


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