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nightmare
【レイプ 官能小説】

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暗雲-1

 妻の姿が夜の衣に完全に包み込まれたとき、私は妙な胸騒ぎをおぼえていた。
 先ほどから肌寒く感じるのは気のせいだけではないかもしれない。
 石段の両脇は舗装されておらず、地肌が剥き出しになっている。この山全体を覆う影の正体が、そこから何本も突き出ている木のせいであることに今更ながらに気づいた。上空でひろがった枝葉が重なり合うさまは、まるで傘の骨子のようだが、それが密集して、さらに我々を星々を遠ざけるのだった。
 さらによく目を凝らすと、どっしりとおろした根のあいだを縫うように草花が生えている。その結果、あちらこちらに物陰ができ、得体のしれない何かが潜んでいるようにもみえる。それらが黒い帳とあいまって、いっそう不気味さをかきたてた。
 そんな夜の表情から、私は古い伝承を思い出していた。詳しくおぼえていないが、この地に天狗が住んでいたという言い伝えだ。
 その山伏姿の妖怪は山間を跳びまわり、さまざまな怪異を起こすと言う。昼とは別の顔をみせるこの一帯をつい、その仕業ではないかと疑ってしまうのは考えすぎではないかもしれない。
 秋穂は頂上にたどり着いたのだろうか。闇は濃く彼女を見失っても階段はなお続き、今以って頂点を見ることはかなわなかった。
 懸命にもつれる足を励まして、妻のもとを目指した。頭上から言い争うような声が聞こえてきた。
 最後の一段を登った私の目に異様な光景がとびこんできた。
 商店街を出てここへくるまで、人っ子ひとり逢わなかったというのに、そこには数人の影があった。
 見知らぬ男たちが半円を描くように立っており、それに対面するかたちで秋穂がいた。
 古ぼけた電灯がひとつ、寂しげに社殿を照らしていた。それは暗い未来を暗示するかのように、不吉な明滅を繰り返していた。
 相手は全部で四人。いずれもシャツの裾を出し、前をだらしなく開けている。
 高校生ぐらいだろうか。ふだん中学生を見慣れている私にはそう思えた。顔にはまだあどけなさが残っているが、その年齢特有の危なっかしさがある。
 しかも彼らははやくも剣呑な雰囲気を漂わせており、どうみても、道を尋ねる物腰ではない。私は物音を立てないよう、あたりを探った。
 ジッジッ、と空気が震えた。虫たちが明かりにたかり、感電する音だった。そのせいではないだろうが、電灯の瞬きが激しくなった気がした。私の動揺を見透かすように。
 こんな時間に、こんな場所で彼らは何をしていたのか。いや、大事なのはこれから何をしようというほうだった。
 そういえば、先ほどお話した悪天狗は里に降りてきては若い娘を連れ去ったと聞く。今、目の前で起きていることと、その古い伝説を何故かそのときの私は重ね合わせるように見ていた。


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